鳥取大学農学部 Faculty of Agriculture, Tottori University

教員詳細

教授

佐藤 陽子

Yoko SATO

所属
共同獣医学科
講座
基礎獣医学
教育研究分野
発生・生殖生物化学
主な担当科目
生化学A、先端基礎獣医学特別講義、国際獣医事英語購読

研究の概要

生殖細胞の謎を探る。生物種の特性を活かした現象の解明へ!

アカイエカ、カタユウレイボヤ、真牡蠣、マウス、ラット、ヒト、マーモセット、猫、犬、豚、牛、ヤク、ゾウ、カモノハシ、ハリモグラ、トガリネズミ、、、、、大学学部生として卒業研究で研究室に所属してから、様々な場所で多くの共同研究者と共に、多様な生物を研究材料としてその特性を活かした発生・生殖生物学の研究を行ってきました。アプローチの方法によって見えてくる異なる景色から、少しでも真実が知りたいと日々研究しています。

Thai Elephant Conservation Centerにて実習の学生さん達と

ゾウ精巣をモデルとした熱ストレスと精子形成の仕組みを明らかにするため、タイの共同研究者の方々と共同研究しています。

主な研究テーマ

生殖細胞の温度感受性の仕組みを探る

多くの哺乳類において、精細胞はその発生過程で体細胞より2℃から7℃温度の低い条件下ではじめて正常な分化及び増殖をすることが知られている。しかし、哺乳類では多くの種類の体細胞と比較して、何故精細胞のみが体温より低い温度下でのみ正常精子形成を行うのかは明らかではない。哺乳類において腹腔内に精巣が留まる停留精巣では多くの場合、陰嚢と比較し精巣温度の上昇によるストレスのため精子形成異常を示すと考えられているがその詳細な仕組みは不明である。一方、ゾウや単孔類のカモノハシやハリモグラでは停留精巣下(図1)で正常な精子形成を行うという他に類を見ない特徴を持つ。熱ストレスを受けた場合、精細胞はそのダメージの具合により、細胞死により除去するか、又は細胞を守り修復し、分化増殖を行うかの運命を選択する。ゾウや単孔類精巣に特徴的な熱ストレス関連因子の発現状態を明らかにし、次に、熱ストレス耐性を持たないマウス精巣の精細胞培養系を用いて、ゾウや単孔類精巣に特徴的な分子の発現状態を変動させ、精子形成状態を解析することにより(図2)熱ストレス回避による精子形成のメカニズムの普遍性について明らかにしたいと考えて研究を進めている。

ゾウ及び単孔類の精巣位置(図1)とゾウ精巣での熱ストレス回避メカニズムの検討方法(図2)

雑種雄性不稔は細胞サイズの調整機構の異常に起因するのか?

ヤク(Bos grunniens)は高地に生息するウシ科の動物である。ヤクがもたらす肉、乳などの生産物は、現地に住む人々にとって必要不可欠な資源であり、ヤクより体格が大きく乳量増加が期待できる交雑種(ヤクと在来牛間)(図1)の育種が望まれているが、雄性不稔のため不可能である(図2)。我々は、雄性不稔の原因を明らかにすること、受精可能な精子形成・成熟の促進に必要な、精巣と精巣上体の機能を回復させる方法を探る研究を行なっている。

最近、雄性不稔を示すヤク雑種精巣上体では、主細胞サイズの変化に伴い機能の変化も起きていることを明らかにした。雑種という遺伝的な背景の違いが細胞サイズの調節を生み出す新たな機構を明らかにすることが可能ではないかと考えている。本研究は、基礎的な細胞サイズの調節機構解明にとどまらず、将来的に、ガンなど各種病態で見られる細胞サイズ異常と機能解明への貢献、さらに、細胞サイズ修正により精巣上体の機能不全を改善し、正常精子成熟を誘導、資源価値の高い雑種の育種開発へ発展させることも期待される。

異形精子の役割を探る。

一部の動物の精子には受精能を持つ正常精子の他に受精能力を持たない異型精子が存在するがその役割は不明である。身近な環境で採取可能なカワニナ (Semisulcospira libertine)を用いて、異形精子の形態、発生段階の形態変化及び精巣発生過程の季節変化を採取個体の塗沫標本と精巣組織標本により明らかにしてきた。また、正常精子と異形精子の受精に対する機能を検討するには、成熟した正常な卵子が必要であるため、卵巣の季節変化についても検討を行っている。さらに、異形精子の正確な発生段階とその精子形成過程、また生理学的な機能の検討のため、培養系の確立を目指した検討を行っている。

カワニナの正常精子(A)は楕円形の頭部と1本の鞭毛を持つが、異形精子(B)は細長い頭部と多くの鞭毛を持つ。

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