鳥取大学農学部 Faculty of Agriculture, Tottori University

教員詳細

講師

辻野 久美子

Kumiko TSUJINO

所属
共同獣医学科
講座
臨床獣医学
教育研究分野
獣医内科学
主な担当科目
内科学(B) プレクリニカル実習A, B 高度小動物臨床学特別講義

研究の概要

養育放棄を解明し、親と子の幸せと超少子高齢化に貢献する

近年、児童虐待・養育放棄は増加の一途を辿っています。児童虐待・養育放棄は、ただ痛ましいだけではなく、子の成長後のストレス不耐性や精神疾患の要因となり、さらには、子へ引き継がれることがわかっており、超少子高齢化問題の深刻さに拍車をかけています。次世代を担う子の健やかな成長と超少子高齢化問題解決に貢献するため、養育放棄モデル動物を確立し、養育放棄の病態を解明することを目指します。

児童虐待・養育放棄が超少子高齢化問題に与える影響

増加の一途をたどる児童虐待・養育放棄は、子の脳発達に多大な悪影響を及ぼし、高齢者を支える次世代の健康を害することで、超少子高齢化問題の深刻さに拍車をかけています。

主な研究テーマ

アトピー性皮膚炎モデルNC/Tndマウスの養育放棄モデルとしての確立

アトピー性皮膚炎のモデルとして汎用されているNC/Tndマウスの高頻度にみられる養育放棄に着目し、養育放棄モデルとしての有用性を検証しています。NC/Tndマウスの養育放棄は、冬季の繁殖や、妊娠中や周産期の飼育環境の変化(飼育室の移動、いつもと異なるハンドリングなど)によって生ずる傾向にあることから、NC/Tndマウスはストレス耐性が低く、わずかなストレスで養育意欲を失ってしまうのではないかと考えました。
 そこでまず初めに、冬季繁殖時の養育放棄に着目し、慢性的な環境温度の低下が養育放棄の原因であると仮説を立て、適正飼育温度よりもわずかに低い飼育温度で養育行動を観察したところ、NC/Tndマウスに有意な養育放棄が認められました。

(a) 軽度低温環境において、NC/Tndマウスでは顕著な養育放棄・子食殺が認められる。** P < 0.05, ## P < 0.05、(b) 養育放棄・子食殺を行うNC/Tndマウス、(c) 母乳を与えているBALB/cマウス。

アトピー性皮膚炎モデルNC/Tndマウスにおける養育放棄とストレス誘発炎症性サイトカインとの関連性

児童虐待は、実母による虐待が最も多く、その半数以上の母親が心理的・精神的問題を抱えています。慢性ストレスによって生ずる炎症性サイトカインは、神経細胞を傷害し、心理的・精神的異常を引き起こすことが示唆されていますが、児童虐待・養育放棄の誘因であるかどうかは、未だ不明のままです。また、ストレスはアトピー性皮膚炎の発症・増悪要因であり、アトピー性皮膚炎患者ではうつ病・不安症が多いことが知られています。本研究では、NC/Tndマウスが妊娠中のストレスによって養育放棄を引き起こすことに着目し、養育放棄個体の脳内母性行動関連ホルモン・神経伝達物質および、それらの受容体の発現を調べるとともに、養育放棄の引き金となる前炎症性サイトカインを突き止めます。

慢性ストレスによる脳内炎症(炎症性サイトカイン)が養育放棄に及ぼす影響を解明していきます。

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