鳥取大学農学部 Faculty of Agriculture, Tottori University

教員詳細

教授

竹内 崇

Takashi TAKEUCHI

所属
共同獣医学科
講座
臨床獣医学
教育研究分野
獣医臨床検査学
主な担当科目
内科学A、臓器別各論Ⅳ、総合参加型臨床実習

研究の概要

難治性疾患に対し、副作用の少ない治療法・緩和ケアを探求します

鉄結合性糖蛋白であるラクトフェリンは乳汁をはじめ、様々な分泌物中に含まれます。ラクトフェリンは生体防御のほか、細胞増殖促進、抗炎症など様々な作用を有する多機能タンパクです。私は神経系の機能異常に対するラクトフェリンの新規作用に注目して研究を進めています。

ラクトフェリンによる主な作用

多機能タンパクであるラクトフェリンには様々な作用が報告されていますが、我々の研究室では、鎮痛増強、抗ストレス、抗不安、高血圧改善、脂質代謝改善、糖代謝改善などの新規作用を発見しました。

主な研究テーマ

脊髄障害に対するラクトフェリンの歩行機能回復効果

交通事故等で物理的に脊髄が挫滅するなどの脊髄障害では重度の歩行運動障害が生じます。運動機能を回復させるためには脊髄の軸索が再生される必要がありますが、我々は、ラクトフェリンを経口投与または脊髄の障害部位に直接持続投与することで、運動機能を回復させることに成功しました。現在は、ラクトフェリンの作用メカニズムを解析しています。

写真は実験的にラットの脊髄に損傷を作製した組織像です。脊髄の一部が挫滅すると、時間の経過とともに神経細胞が脱落し、神経軸索にも重度の変性が起こります。

ラット新生子の脳生後発達に及ぼすラクトフェリンの作用

ラクトフェリンは初乳中に多量に存在することから、新生児の発育に重要なタンパク質であると考えられます。しかしながら、新生児がラクトフェリンを経口摂取することで、脳の生後発達にどのような影響があるのかは、十分に解明されていません。本研究では、初乳中にラクトフェリンが存在しないラットの新生子を用いて、経口投与したラクトフェリンが髄鞘形成をはじめとする脳の生後発達に対してどのように促進効果を発揮するのかについて解析しています。

写真は脳の海馬の一部である海馬采において、髄鞘の主要なタンパクであるミエリン塩基性蛋白を発色させた免疫染色像です。生後10日齢ラットの海馬采における髄鞘形成を比較すると、ラクトフェリンを生後5日から5日間経口投与することによって、海馬采のミエリン塩基性蛋白の発現(褐色の領域)は顕著に増加しています。

急性呼吸窮迫症候群に対するラクトフェリンの作用

急性呼吸窮迫症候群は、呼吸器の炎症などに伴って短時間のうちに急激に換気不全に陥る病態ですが、感染時に好中球が異常に活性化すると急性呼吸窮迫症候群を発症する誘因となります。このような好中球の異常な活性に伴って生じるNeutrophil extracellular traps (NETs)の反応をラクトフェリンは抑制することが明らかとなっており、急性呼吸窮迫症候群に対しても軽減する効果が期待されます。

マウスの血液から好中球のみを分離し、細胞内のカルシウム濃度を上昇させる刺激を与えると細胞膜が破裂し、細胞質に分布するタンパクや顆粒、核に分布するヒストンがシトルリン化されて細胞外へ放出される反応(Neutrophil extracellular traps, NETs)が起こります。写真は、ラクトフェリンがこれらNETs反応を抑制することを示す蛍光免疫染色像です。

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