鳥取大学農学部 Faculty of Agriculture, Tottori University

教員詳細

教授

森田 剛仁

Takehito MORITA

所属
共同獣医学科
講座
病態獣医学
教育研究分野
獣医病理学
主な担当科目
獣医病理学

研究の概要

動物の病気やヒトの疾患モデル動物の病態を実験的に検証する

動物(家畜、伴侶動物、野生動物など)の様々な自然発生性疾患の発生メカニズムについて実験的に検証しています。また、ヒトの疾患(特に、低血糖脳症やてんかんなどの神経系疾患)の動物モデルの確立や. 地球温暖化に伴い増加している黄砂による健康影響に関する研究も行っています。以上の研究を行いながら、獣医学の基礎から臨床的な事象まで総合的に理解できるような獣医師の育成を目指しています。

低血糖脳症モデルラットにおいて、低血糖後に生じる神経細胞死に先行して、桿状ミクログリアが増殖し、これらミクログリアが様々なサイトカインを放出し、神経細胞死を引き起こす可能性が示唆された。

主な研究テーマ

黄砂類似粒子の経気道暴露による肺組織傷害に関する研究

中国大陸の乾燥・半乾燥地域から発生する黄砂は、近年、頻度・量ともに増加しており、人と動物双方に悪影響を与える大気汚染物質の一つとして懸念されています。黄砂は主成分の一つにシリカ(二酸化ケイ素)を含んでいて、シリカの持続的職業曝露による珪肺症の発生やシリカによる免疫系への影響が問題となっています。そこで、吸入曝露装置を用いた黄砂類似粒子を実験動物に経気道的に暴露し、肺や免疫系にどのような傷害が生じるのか、またその傷害メカニズムについて明らかにすることを目指しています。

黄砂類似粒子をマウスへ吸入曝露すると、長い月日を経て、肺にび慢性の炎症や線維化等の肺組織傷害が生じ、その重要な要因としてマクロファージが産生する炎症性サイトカインの関与が示唆された。

薬物誘発性てんかんラットの梨状葉における二次的発作焦点形成に関する研究

梨状葉皮質は、ヒトのてんかん患者における新たな二次的発作焦点として近年注目されています。これまで正常の梨状葉皮質には未熟神経細胞が散在していることを明らかにし、さらに薬物誘発性のてんかん発作後のラットの梨状葉皮質には神経細胞壊死、グリオーシスなどの組織壊死が生じること、それに続いて新生神経組織が形成されることを組織学的に証明し、報告してきました。現在は、脳由来神経栄養因子(BDNF)、神経成長因子(NGF)などに注目しながら、その新生神経組織の形成過程に何が関与しているのか明らかにすることを目指しています。

薬物誘発性のてんかん後には大脳の梨状葉に組織壊死が生じ、主にⅡ層において未熟神経細胞が増殖し、新生神経組織が形成される。その新生神経組織の形成には、アストロサイト由来のBDNFおよびNGFが関与している可能性が示唆された。

変異強病原性ニューカッスル病ウイルスの病原性に関する比較病理学的研究

近年野外で水禽に致死的な病原性を示すニューカッスル病ウイルス(NDV)が出現しています。本学獣医公衆衛生学教室にて作出されたNDV鶏継代株およびアヒル継代株(NDV鶏継代株をアヒル雛の気嚢で5代、脳で20代継代)をアヒルに接種したところ、アヒル継代株が膵臓、免疫系および神経系組織に重度の病変を引き起こしました。両株間には10箇所のアミノ酸置換が認められ、それらのうち膜融合蛋白(rF142)とマトリックス蛋白(rM44)をコードする遺伝子の変異が病原性増強に関与していると推定されました。現在、これらの組換えウイルスをアヒルに接種し、遺伝子の変異と病原性との関連性を明らかにすることを目指しています。

脳脊髄について、F変異株接種群では軽度~中程度の病変を認め、ウイルス抗原陽性像は軽度。一方、3遺伝子変異株お接種群では比較的早期から壊死を伴う強い病変が形成され、広範囲にわたりウイルス抗原陽性像が観察された。

オプション

文字サイズ

  • 標準

文字色/背景色

  • 標準
  • 白/黒
  • 黄/青