鳥取大学農学部 Faculty of Agriculture, Tottori University

教員詳細

教授

明石 欣也

Kinya AKASHI

所属
生命環境農学科
担当教育コース
農芸化学
教育研究分野
分子細胞生物学
主な担当科目
生化学,生命情報科学
研究に関連する高校教科

研究の概要

乾燥地植物の環境ストレス耐性を担う分子メカニズムの解明と利用

乾燥地に生育する植物は、水分欠乏や高温などの厳しい環境ストレスに曝されます。一方、私たちの身の回りには、乾燥地を起源とする植物を利用した食品や工業製品が数多く使われています。明石研究室では、乾燥地を起源とする植物が悪環境ストレスに耐え、有用物質を作り出す仕組みを、分子レベルで解明する基礎研究と、そしてこれらの仕組みを農業・環境・食品・化成品分野などに応用する開発を、国際共同研究のもと進めています。

乾燥地植物の環境ストレス耐性の研究

アフリカ・カラハリ砂漠原産の野生種スイカ、乾燥耐性のバイオ燃料植物ジャトロファ、鳥取産の食用スイカ、高温耐性コムギなどを用いて、ストレス下の生理・生化学・遺伝子挙動を調べると共に、有用品種の育種や有用物質の利用開発を進めています。

主な研究テーマ

野生種スイカの乾燥耐性メカニズムの解析

アフリカ・カラハリ砂漠に自生する野生種スイカは、乾燥・高温・強光などの厳しい環境ストレスに対して高い耐性を持っています。ストレス下で野生種スイカは、活性酸素ヒドロキシ・ラジカルの消去に優れるアミノ酸のシトルリンを葉に高蓄積し、抗酸化傷害から身を守ります。根は、乾燥ストレスに応答して生育が促進され、土壌深部の水分獲得能の強化を図ります。これらのストレス耐性を担う代謝制御や遺伝子応答の研究を進めており、乾燥耐性植物が厳しい環境を生き抜く秘密の解明と、得られた知見を利用した分子育種や化合物利用の応用開発を行っています。

カラハリ砂漠に自生する野生種スイカの群落と(左上)、スイカ果実(左下)。強光・高温下で乾燥ストレスを付与すると、他の植物は褐変化して枯死するが、野生種スイカは葉の緑を保ち生存する。

バイオ燃料植物ジャトロファの研究

ジャトロファは、トウダイグサ科の多年生植物で、高い乾燥ストレスを有しています(左上)。その種子は中性脂質を高濃度で含有しているため(左下)、乾燥地でのバイオ燃料やバイオプラスチック生産が期待されています。この植物の油脂生産性をさらに高めるため、遺伝子組換え法やゲノム編集技術を用い、多収でストレス耐性の高いジャトロファ新品種の育種を進めています(右上)。また、種子搾油の成分分析や機能性の評価、バイオプラスチック製造技術の開発などを、国際共同研究のもと進めています。

アフリカ・ボツワナ実験圃場でのジャトロファ共同研究(左上)。収穫された種子は油脂を高濃度で含む(左下)。アグロバクテリア法によるジャトロファの形質転換過程で、葉切片から形質転換シュートを誘導する(右上)。得られた油脂は、成分・燃料特性の分析や、バイオプラスチックの製造に利用(右下)。

乾燥地を起源とする作物の機能性の研究

アフリカの野生種スイカは長年の育種選抜を経て、夏の風物詩である甘くて瑞々しい食用のスイカが現代において誕生しました。鳥取県はスイカの大産地です。スイカに含まれる抗酸化性物質のシトルリンやリコペン、スイカの品質に大きな影響を及ぼす多糖類ペクチンなどの生理挙動や機能性について、共同研究を進めています。コムギはアフリカ・スーダンのナイル川流域など高温地帯でも生産されていますが、さらなる高温耐性の育種が求められています。厳しい環境で生育するコムギのストレス診断を迅速に行う技術開発や、選抜に有用な代謝マーカー等の分析を進めています。

スイカ果実の発達過程と、内部のリコペン(赤色色素で高い抗酸化性を有する機能性成分)の蓄積パターンの解析(左)。スーダンのワドメダニ地域で栽培され、収穫期を迎えたコムギ畑(右上)。これらの植物に含まれる成分分析に利用する分析機器の一つであるガス・クロマトグラフィー質量分析器(右下)。糖質・脂質や各種の化合物の分析に有用である。

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