鳥取大学農学部 Faculty of Agriculture, Tottori University

教員詳細

准教授

芳賀 弘和

Hirokazu HAGA

所属
生命環境農学科
担当教育コース
里地里山環境管理学
教育研究分野
緑地防災学
主な担当科目
砂防学I 砂防学II 流域環境システム演習II
研究に関連する高校教科

研究の概要

生物の暮らしを支える“環境”を知る

私は森や川によく出かけます。しかし、森林ファンや釣りファンではありません。“環境”を測るためです。つまり、気温、地温、雨、雪、風、地下水、川の水量、水質、水温などを計測しています。樹木、渓流魚、両生類、昆虫など生物を相手にすることも多く、エキサイティングな日々です。人間、野生動物、植物の暮らしを支える“環境”を記述し、農業や林業への貢献、さらには、水・土砂・気象災害対策への応用を目指しています。

吹雪の中でのフィールドワーク

本学の研究林「蒜山(ひるぜん)の森」では雪が2mも積もることがあります。この地域は豪雪地帯の南限域に位置しており、年降水量のうち雪が占める割合は無視できません。人間にとって、あるいは森林や河川の生態系にとって、雪はどのような側面を持っているのでしょうか?温暖化の進行が懸念される昨今にあって、このような視点を持ってフィールドに出かけていくことは面白いものです。写真のような吹雪きですら清々しく感じられます。

主な研究テーマ

中山間地の持続的水利用と水環境保全に向けた森林域での新たな水源涵養機能評価

近年の中山間地域における社会的・自然的環境の変化(過疎化、山林・農地・利水施設の管理放棄、河道内での過剰な土砂滞留や河川の樹林化)を考えると、中山間地域における人間や水生生物等の水利用を考慮した水源涵養機能の評価は今後ますます重要になると思われます。この研究では、森林の水源涵養機能を下流域での持続的水利用や生態系保全と結びつけて評価するための新たな手法を構築しようとしています。これまで「水量」が主体だった森林の水源涵養機能の見方を下流側の「水利用」と「水環境」を含んだ見方へと拡張する方向性を示そうとしています。

中山間地の落葉広葉樹林内を流れる川において、学生たちが水量を測定している様子を示しています。この川では、平水時には写真のようなきれいな水が流れていますが、一旦雨が降ると水の量は急上昇し、濁りもひどくなります。この森林から1年間に流れ出る水のうち、きれいな水と濁った水の割合はどのくらいになるのでしょうか?森林は私たちにとって利用しやすく、かつ下流域の生態系にとって有用な水をいったいどのくらいもたらしているのでしょうか?

森林管理に伴う源流域河川の攪乱シグナルの検出-水の流出経路と炭素・窒素濃度に基づく検出手法の提案-

国内の人工林の多くは一般的な収穫期(樹齢>50年)を超えており,今後の林業活動に伴い河岸で伐った倒木が川に入る可能性が高まっています。また,河岸に植えられて大きく成長した樹木の倒伏と流木化は防災上問題となるため,河岸の倒木や流木の撤去に伴う流路内の直接的攪乱も懸念されています。これらの攪乱が川の水に与える影響を抽出することは森林管理と河川管理の両立に資するものです。本研究では,倒木や流木の除去による流路内攪乱のシグナルを捉える水文・水質学的手法を提案することを目的とします。これが達成できれば,攪乱の強度や継続期間を河川水の情報から容易に判断できるようになると期待しています。

私たちの研究対象地である「蒜山の森」を空撮したものです。写真の左奥には大山(だいせん)が見えます。蒜山の森には,戦後に育成されたスギやヒノキの人工林に加え,コナラを主体とする天然生の落葉広葉樹林が広がっています。これらの森林を適切に管理していくにはどうすればよいでしょうか?河畔域や河川内の整備も含めて,森林管理が下流域にもたらす影響を抽出・監視することが鍵になります。

豪雪地帯南限域のアマゴおよびオオサンショウウオ生息河川における動的水環境の把握―水文・水質変動を考慮した生息場の持続性評価―

本研究では、アマゴおよびオオサンショウウオが生息する中国山地中部の源流域河川において、降雨時も含めた通年での水文・水質観測を行い、その生息地の水環境の特長について明らかにしようとしています。また、調査対象河川での地下水湧出域とアマゴおよびオオサンショウウオの生息場との関連性について分析しようとしています。さらに、過去10年間におよぶ長期水文データに基づいてアマゴおよびオオサンショウウオの生息にとって適/不適と判定される期間を試算し、調査対象河川の生息場としての持続性を検討しようとしています。

アマゴとオオサンショウウオの生息数を把握するために学生が潜水調査をしている様子を示しています。この調査河川は、いわゆる源流域にあり、浅い場所(水深<15cm)が大部分を占めています。時期と場所によっては水深が10cmを下回ることがあるため,アマゴやオオサンショウウオの生息限界に近い河川と言えるかもしれません。このような河川での水文条件と水環境の把握は生物の保全や生物との共生を考える上で重要です。

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