pLaTeXによる科学論文作成方法(Windows)

 pLaTeXによる科学論文作成において,これまでに収集した情報と試行錯誤により得たノウハウを紹介します。

dvioutをpdfに正しく変換する方法

[使用ソフト]

dvioutのprintでAdobe PDFを選択し印刷すると,dvioutをPDFに変換する。

[使用ソフト]

 dvipsk.exeを起動するためのプログラムはdvips,gsview32.exeを起動するためのプログラムはGSviewである。また,Windowsにおいて,dvipsはpTeX2.0.8のサブプログラムであり,GSviewはGS Toolsのサブプログラムであるとする。Ghostscript+GSviewの設定方法及びgraphics.styの設定方法は,ここを参照して設定する。

[簡単にdvioutをpsやpdfに変換する方法]

 TexMAXを秀丸エディタへ登録していれば,簡単にdvioutをpsやpdfに変換することが可能である。この方法が,最も簡単でかつ間違いも少なく作業を完了させることができる。しかし,epsファイルの出力が不鮮明な場合がある。この方法でpdfを作成するのは,画像を含まない場合が適当である。

(注意点)

[正しい作業手順(Adobe Acrobat 6.0日本語版の場合)]

  1. pTeX 2.0.8のdvipsでdvioutをpsに変換する。
    このときdvioutは,フォルダの下位に置いておかず,例えば,C:\やD:\の上位フォルダに置いておく。下位のフォルダでは,正確にps変換を行えない場合がある。「ファイル(F)」→「PSに変換する(O)」を選択する。変換されたpsはdvioutと同じフォルダ内に自動的に保存される。
  2. Acrobat Distillerを起動し,psをpdfに変換する。
    Adobe PDF設定のデフォルト設定次第では,変換後のpdfのマージンが適当でない場合があるので,「設定(S)」→「Adobe PDFの設定(E)」の「一般」において,A4用紙の場合はデフォルトページサイズ「幅(W):20.9,高さ(G):29.6,単位(N):センチ」にしておく。また,「フォント」で「すべてのフォントを埋め込む(E)」をチェックしていること。

[正しい作業手順(Adobe Acrobat 5.0日本語版の場合)]

  1. pTeX 2.0.8のdvipsでdvioutをpsに変換する。
    「ファイル(F)」→「PSに変換する(O)」
    このときdvioutは,フォルダの下位に置いておかず,例えば,C:\やD:\の上位フォルダに置いておく。下位のフォルダでは,正確にps変換を行えない場合がある。変換されたpsはdvioutと同じフォルダ内に自動的に保存される。
  2. GSviewからAcrobat Distillerを用いてpsをpdfに変換する。
    (a) GS ToolsのGSviewで変換したpsを開く。
    「File」→「Open」
    (b) Acrobat Distillerを用いてpsをpdfに変換する。
    「File」→「Print」でプリンタにAcrobat Distillerを選択し「OK」を押す。pdfの保存先を選択する画面が開かれる。適当な保存先とファイル名を決定し,「保存(s)」を押す。GSview Printが自動的に立ち上がり,pdfへの変換作業をはじめる。GSview Print画面が閉じたら作業の終了である。
    GSviewの下でAdobe Distillerを起動させないとpsを正確にpdfに変換できない。
  3. Adobe Acrobat 5.0日本語版で作成されたpdfを確認する。
  4. 作成したpdfをプリントアウトしたところ,Canon LBP-1610では出力用紙に無数の線が入り正確なプリントアウトを行うことができなかった。但し,Adobe Acrobat 5.0日本語版の印刷作業画面の右上にある「画像として印刷(I)」のチェックを外した状態では,線を少なくすることができた。理由は不明である。一方,EPSON PM-770Cでは正確なプリントアウトを行うことができた。

注) 変換後のpdfの鮮明さは,Acrobat Distillerの「設定(S)→ジョブオプション(J)→一般」における解像度とdvioutにおけるResolution「Option→Setup Parameters→Resolution」に関係する。dvioutのResolutionが600である場合はAcrobat Distillerの解像度も600であるのが適当である。また,Acrobat Distillerにおけるフォントの設定では「すべてのフォントを埋め込む」を必ずチェックしておく必要がある。

[間違った作業方法]

[その他]

Ghostscriptとgraphics.styの設定方法

[Ghostscriptの設定方法]

 Ghostscript+GSviewを正しく設定する方法は日本語対応 gswin 5.50 ミニ情報に詳しく書かれている。このページを参照してGhostscript+GSviewを正しく設定する。但し,Ghostscriptがインストールされているだけでは,dvioutから利用することができない。以下の事前準備を行っておく必要がある。ここでは,c:\gstools\gs5.50にGhostscriptがインストールされているとして説明する。

  1. dvioutを起動し,メニューから「Option→Setup Parameters」を選択してdvioutのプロパティシートを開く。
  2. 「Graphic」ページを開き,「gsx」の欄に「c:\gstools\gs5.50\gswin32c.exe」と記述して「Save」ボタンを押す。但し,「gsx」ボタンを押すことで,自動認識させる方が簡単で適切な設定を行うことができる。「gfit:color BMP」と「gclip:clip」にはチェックを入れ,「color specials」にはチェックを入れ「auto mode(p2)」を選択する。
  3. 「REGISTRY」ページを開き,リストボックスの中から「gsx」を探し,先頭に+マークが付いていることを確認する。付いていない場合は「All Set」ボタンを押して全ての項目に+マークを付けるか,「gsx」行をマウスでクリックし「Auto Load」ボタンを押すことで+マークを付ける。
  4. 最後に「Save」ボタンを押し,「OK」ボタンを押してdvioutのプロパティシートを閉じる。次回起動から,Ghostscriptを利用することができるようになる。

[graphics.styの設定方法]

 graphics.styの使用にあたっては,次の操作をしなければならない時がある。
\ptex\texmf\tex\latex\config\graphics.cfgにおける次の2行において,2行目の先頭に%が付いておりコメント文になっている場合は,この%をはずす。

 \DeclareOption{dviout}{\def\Gin@driver{dviout.def}}
 \ExecuteOptions{dviout}

Ngraph for Windowsで作成したグラフをepsに変換しLaTeXに挿入する方法

[一般的な作業手順]

  1. Ngraphでグラフを作成した後,「出力「(O)」→「外部ドライバ(E)」を選択する。ドライバは「PostScript(EPSF)」,オプションは「-e -c」とし,ファイルには適当な名前を入れる。ここで,拡張子はepsとする。
  2. LaTeXにepsを挿入する場合は,\includegraphics{ }を使う。ここで,documentstyleでgraphicsを入れていないとepsの出力を行うことができない。例えば,\documentstyle[11pt,a4j,graphics,multicol]{jarticle}となる。以下に,figure環境におけるepsの使い方の一例を示す。
%%%%%%%%%% Fig. 1 :図番号の記述(確認用)
\begin{figure*}[!t] % 2段組の場合figure*で1段組出力 \endも同じ
\vspace*{-0.6cm} % 図と上文章の間を調整する場合
\begin{center}
\includegraphics{fig1.eps} % fig1.epsを読み込む
%\vspace*{-0.5cm} % 図と表題の間を調整する場合
\caption{各種評価方法による動弾性係数の評価結果} % 表題
\label{fig:1}
\end{center}
\vspace*{-0.6cm} % 表題と下文章の間を調整する場合
\end{figure*}
%%%%%%%%%% Fig. 1

[epsの拡大縮小]

 Ngraph自体でグラフの微調整を行いepsの拡大縮小を行うこともできるし,またgraphicsのオプション引き数を用いることでもepsの拡大縮小を行うことができる。しかし,これらの操作は面倒であるだけでなく,複数のグラフを用いる場合に各グラフの位置関係がずれる場合があることから適当な方法であるとはいえない。ここではgraファイルを用いたepsの拡大縮小方法を説明する。

  1. Ngraphでグラフを作成した後,「出力「(O)」→「GRAファイル(G)」を選択する。ファイル名に適当な名前を付け,「保存(s)」を押す。この操作によるgraファイルを作成する。
  2. 新規作成ファイルを開き,「合成(M)」→「開く(O)」を選択する。ここでepsに変換するgraファイルを読み込む。位置の拡大率はデフォルト値で10000であるが,これを9000にするとgraファイルを90%に縮小して出力する。110000では110%に拡大して出力する。
  3. 「出力「(O)」→「外部ドライバ(E)」を選択する。ドライバは「PostScript(EPSF)」,オプションは「-e -c」とし,ファイルには適当な名前を入れる。ここで,拡張子はepsとする。

 LaTeXにepsを挿入するときの記述方法は,「一般的な作業手順」の中で説明したものと同じである。このように,graファイルの読み込み時の拡大率を変えることで簡単にepsの拡大縮小を行うことができる。

SigmaPlot8.0で作成したグラフをepsに変換しLaTeXに挿入する方法

  1. SigmaPlotでグラフを作成した後,「Edit」→「Select All」でグラフ全体を選択する。
  2. 「File」→「Export」を選択し,「ファイルの種類(T)」を「EPS(Encapsulated PostScript, *.eps)」にし,「ファイル名(N)」を適当に入れ,「Export」をクリックする。
  3. 作成されるepsのサイズを踏まえて「Final figure size」を設定する。縦横倍率は自動確保されるので,Height,Widthのどちらかを設定するだけでもよい。
  4. 「OK」をクリックするとepsが作成される。

 LaTeXにepsを挿入する方法は,Ngraphの場合と同じである。

印刷物や各種画像ファイルをepsに変換しLaTeXに挿入する方法

  1. 印刷物の場合は,スキャニングし画像ファイルを作成する。画像ファイルがある場合はそれを使う。
  2. 例えば,Adobe PhotoDeluxeを用いてepsを作成する場合は,「ファイル(F)」→「開く(O)」で画像を開き,「ファイル(F)」→「出力用プラグ(E)」→「ファイル形式(F)」を選択した後,別名で保存のところを「EPS (*.EPS)」に設定する。これで,epsを作成することができる。Adobe PhotoDeluxeで印刷物をスキャニングした時には,画像を開く過程を省略することができる。ここで,「プレビュー(V):なし,エンコーディング(E):ASCII」とし,「ハーフトーンスクリーン情報を含む(H)とトランスファ関数を含む(T)のチェックは入れない」に設定して保存を行う。
  3. スキャニングした画像をeps変換しdvioutで出力してみると,時々画像が薄くなっていたり,画像の背景が薄く灰色になっていることがある。このような場合は,Adobe PhotoDeluxeにおいては,画質の「明るさ・コントラスト」を変更して調整する。いろいろと試してみた結果,明るさは+20,コントラストは+80が適当である。
  4. LaTeXにepsを挿入するときの記述方法は,上記したものと同じである。
 LaTeXに挿入するeps形式の図を作成するためのドローソフトというものもある。

Excelの表をLaTex形式に変換するExcelのアドイン

 LaTeXユーザーには必見のアドインである。これまでExcelで作成していた表を簡単にLaTeX形式に変換することができる。

作図した結果をLaTeX形式に変換できるエディタ

 グラフィック画面上で作成した図をLaTexのソースファイルに変換して利用する。作成した図はファイルに保存して,再利用することも可能である。別ファイルで保存したグラフィックファイルは,\input{ }を使い簡単にメインファイルに読み込むことができる。このように\input{ }を使えば,メインファイルの大幅な書き換えを行う必要はない。

脚注の出力をテキスト幅にし脚注の線をテキスト幅にする方法

[脚注の出力をテキスト幅にする方法]

 通常2段組の原稿においては,\twocolumnを利用する。一般的な記述としては以下のようになる。

\documentstyle[11pt,a4j,graphics]{jarticle}
\begin{document}
\twocolumn
[ % 1段組で記述する範囲の始まり
2段組の原稿における1段組記述
] % 1段組で記述する範囲の終わり
\renewcommand{\thefootnote}{\fnsymbol{footnote}}
\footnotetext[1]{鳥取大学農学部,Faculty of Agriculture, Tottori University}
本文
\end{document}

 上記の記述方法では,脚注が2段組の左段下に出力される。ここで,脚注をテキスト幅に出力するためには,multicol.styを利用する。一般的な記述としては以下のようになる。

\documentstyle[11pt,a4j,graphics,multicol]{jarticle}
\begin{document}
% 1段組で記述する範囲の始まり
2段組の原稿における1段組記述
% 1段組で記述する範囲の終わり
\renewcommand{\thefootnote}{\fnsymbol{footnote}}
\footnotetext[1]{鳥取大学農学部,Faculty of Agriculture, Tottori University}
\begin{multicols}{2} % 2段組で記述する範囲の始まり
本文
\end{multicols} % 2段組で記述する範囲の終わり
\end{document}

 上記の記述方法により,脚注をテキスト幅に出力することができる。但し,multicolを利用すると行間が異常に広がることがあることから,\begin{multicols}{2}の後に例えば以下の記述をすることで行間の調整を行う。

 \setlength{\baselineskip}{5mm}
 \renewcommand{\baselinestretch}{1.8}

 また,figure環境においては,「\begin{figure*},\end{figure*}」はdvioutできるが,「\begin{figure},\end{figure}」はdvioutすることができない。これは,multicolで2段組を宣言しているからである。このような場合は,figure環境を設定せず,グラフの出力だけを以下のように行うことで対応する。table環境も同じである。

 \begin{center}
 %\vspace*{-0.5cm} % 図と上文章の間を調整する場合
 \includegraphics{fig1.eps} % fig1.epsを読み込む
 %\vspace*{-0.5cm} % 図と下文章の間を調整する場合
 \end{center}

 このようにmulticolを利用することで脚注をテキスト幅に出力することができる。

[脚注の線をテキスト幅にする方法]

 multicolを利用することで脚注をテキスト幅に出力することができたとしても,このままでは脚注の線は左段下に書かれたままである。そこで以下のようにして脚注の線をテキスト幅に変更する。ここでは,jarticle.styを用いた場合において,脚注の線をテキスト幅に変更する方法を示す。修正するのは,\ptex\texmf\tex\platex\base\jarticle.clsである。

\renewcommand{\footnoterule}{%
\kern-3\p@
\hrule width .4\columnwidth
\kern 2.6\p@}

を次のように修正する。

\renewcommand{\footnoterule}{%
\kern-3\p@
\hrule width 1.0\textwidth %%% テキスト幅でラインを引く
\kern 2.6\p@}

PDFの印刷

 PDFをプリンタで印刷する際,プレビュー画面で確認されるものに比べて全体的に小さな(大きな)サイズで印刷されることがあります。この場合は,以下の操作により改善します。

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