インターネットについて

宮崎大学情報処理センター”広報”より

原文を修正し,括弧付きで実名を入れさせて頂きました.


題目:インターネットを利用した自己表現

 1995年3月○○日、私が居る研究室の電話が鳴った。受話器を取ると、聞き慣れない声で、“K大のN(京都大の中桐;現大阪府立大)ですが。緒方さんはいらっしゃいますか?”と関西訛の声が聞こえた。その電話は、前年の農業土木学会大会で顔を合わしていたNさん(中桐さん)からのものであった。

 電話の内容は、前年の大会の時に、初めて開催された大学院生だけの懇親会を、今年も行いたいので宜しくとの内容であった。よくよく考えてみると、今年の大会は宮崎での開催だったのである。お互いの近況報告をした後、彼が、“これから大会開催までの間、まめに連絡を取り合う必要がありますね。電話ではお互い忙しくて連絡が取れないかもしれないので、今後の連絡はE-mailで取り合いましょう。”といった言葉でその時の電話は終わった。

 E-mailは、学内LANのケーブルが研究室に引かれて以来使用してはいたが、学外の人達とのやりとりは数少なく、またE-mail自体の有効性もまだ認識していない頃だったので、“なに、E-mail。”という気持ちは多少あった。

 しかし、後で思い返してみると、この電話がE-mailを含めた広大なインターネットの世界に、私を引きずり込んだ原因となっていた。

 それから約4カ月の間、Nさん(中桐さん)だけでなく、さまざまな人達とE-mailで連絡を取り合い、宮崎大会では約80人近い日本全国の農業土木を学ぶ大学院生と若手研究者、学部生が懇親会に参加してくれて、大学院生だけの懇親会は成功のうちに終わった。

 私が会員になっている農業土木学会には、スチューデント委員会というものがあり、この中に学生通信員というグループがある。私も、K大のNさん(京都大の中桐さん)とのやり取りの中でこの存在を知り、参加させてもらうようになった。

 この学生通信員というグループは、学会からきた事務連絡やさまざまな情報を自分の所属する大学の大学院生に知らせたり、日本全国の農業土木を学ぶ学生の相互連絡・討論の場として活用されている。

 宮崎での大会が終了した後、このグループの中であるやりとりがあった。

 “学生通信員のメーリングリストを作成したらどうか。”

 “学生通信員の自己紹介をする場を作ってはどうか。”

というものである。

 確かに、宮崎での大会終了後、学生通信員の人数は、その前の約4倍に膨れ上がっており、私もそのような場があったらよいなあと思っていた矢先であった。

 このようなやりとりが学生の中であった後、学生通信員の顧問であり、学会のサーバーの管理者であるM大のM先生(三重大の溝口先生;現東京大学)から、“学会専用のWWWホームページを作成してあるから、自己紹介は、そこでやってみてはどうだろうか? どの大学がリンクを申し込んでくるか楽しみにしています。”という内容のE-mailが送られてきた。

 そこで早速、M大にある学会のホームページを見てみると、学生の自己紹介のホームページを作成していたのはM大(三重大)だけであり、その他の大学はまだどこもホームページの作成を行っていなかった。

 “フォフォフォ。”この時、私は直感した。“これは宮崎大がM大(三重大)に続いてホームページを作成し、学会のホームページからリンクを張ってもらわねばならない。”と。

 それからは、HTMLの作成マニュアルをFTPで取ってきて読んだり、これはというWWWのホームページのソースファイルを直接見て、作成方法をまねしたりして、ついに私の自己紹介ホームページを含む宮崎大の農業土木学会所属院生一同のホームページを作成し、M大のM先生(三重大の溝口先生)に学会のホームページからリンクを張ってもらった。

 これで、私の仕事も終わったと思った直後、M大のM先生(三重大の溝口先生)から、“次は、学科のホームページを作ってみては?”というE-mailが届いた。これには、“やられた。やはり、そうきたか。”と思ったが、インターネットの“ドツボ”にはまり込んでいた私は、早速、指導教官のK先生(國武先生)に、農学部農林生産学科生産環境工学コース生産環境造成学講座のホームページ作成についての相談を持ち込んだ。その後、講座の先生方の了解も得ることができ、早速ホームページの作成にとりかかることができた。

 まだまだ講座のホームページ作りは現在進行形であるが、現在では、学会のホームページから、宮崎大学農学部農林生産学科生産環境工学コース生産環境造成学講座のホームページを見ることができるようになっている (http://www.bio.mie-u.ac.jp/doboku/gakkai/index.html)。

 この一連の作業の途中に、“インターネットとは何だろう?”と自分なりに考えたことがあった。

 インターネットの利用方法には、いろいろなものがあると思うが、どうも他力本願的利用が多いような気がする。例えば、インターネットに氾濫している情報の収集にしても、自分で調べることはなく、また聞きして、情報を得る方が多いような気がする。また、インターネットは連絡をとる場、情報を得る場としての認識が強いようであり、自分を表現する場、情報を提供する場としての認識は少ないような印象がある。

 インターネットの特徴の一つに、自分を表現できる場、情報を提供できる場としての利用方法があると思う。私は、この一連のホームページ作りの中から、世界中に張り巡らさせているインターネットの中で、自分を表現できることの喜びと楽しさを知った。この喜びと楽しさは、先生方から与えられるものではなく、個人のやり方一つで得られるものである。

 私にしても、まだ大きいことを言えるような立場ではないし、それに対する行動もまだ不十分ではあるが、ゆくゆくは、“あそこのホームページにはいろいろな情報があり、役に立つ。”と言われるだけの情報提供者になりたいと思っている。今は希望であるが、実現させるか否かは自分の努力次第だと、自分自身に言い聞かせている今日この頃である。

 最後に、私は、自己紹介を含めた自作のホームページのアドレスを、今度作る名刺に書き加えてみようかと秘かにたくらんでいる。皆さんはいかが思われますか?