田中 裕之
小麦粉の品質に関与する遺伝子とタンパク質の研究
私たちはパン、めん、お菓子など、多様な小麦粉製品を毎日のように口にしています。日本では年間約600万トンが消費されますが、その9割はパン用、めん用、お菓子用などそれぞれの用途に応じて、世界中から最適なコムギを選び輸入しています。従って国内生産は残り1割にすぎません。
日本で生産されるコムギのほとんどはめん用であり、日本における多様な小麦粉製品に十分対応できているとは言えません。国内産コムギの自給率向上と輸入コムギの残留農薬の危険性を考えると、各種用途に適したコムギを育成する必要があります。
コムギは種子を粉にし、水などを加えて捏ねた後、焼く、ゆでる、蒸すなど様々に加工して食べます。そして、それぞれの用途に応じて、最も適した品種の小麦粉を使用します。例えば、パンに適した品種はめんには向かず、その逆も言えるのです。
小麦粉製品の多さに比例するかのように、小麦粉の品質には多数の要因が複雑に関与しています。その中でも、小麦粉に水を加えて捏ねるとできる生地(グルテン)の強さは小麦粉の品質に大きく関係します。また、グルテンはコムギ以外の他の穀物では作ることができません。小麦粉中に僅か10%程度含まれるコムギに特有の種子貯蔵タンパク質がグルテン形成の主役です。
それでは、グルテンの強さを改変するために私たちが行った研究を紹介します。
現在、私たちは、上記のグルテン強度に関与する種子貯蔵タンパク質だけでなく、小麦粉の品質に関与するその他の遺伝子、タンパク質についても着目しています。パンコムギの限られた遺伝資源だけでなく、パンコムギと近縁なコムギ連野生種の中から、小麦粉の品質改変に役立ちそうな遺伝子、タンパク質を探索し、解析しています。
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