鳥取大学農学部 Faculty of Agriculture, Tottori University

教員詳細

准教授

佐久間 俊

Shun SAKUMA

所属
生命環境農学科
担当教育コース
植物菌類生産科学
教育研究分野
植物育種学
主な担当科目
植物育種学
研究に関連する高校教科

研究の概要

植物の多様性を理解し、画期的な新品種開発へ

麦類(コムギ、オオムギ、ライムギ)は世界的な主要作物であり、私たちの暮らしに欠かすことの出来ない植物です。植物育種学研究室では麦類の遺伝的多様性を理解して新品種開発に繋げる研究を進めています。麦の穂の形は収量性に大きく影響しますがこれを制御する遺伝子はほとんどわかっていません。圃場で現象を発見し、研究室に持ち帰って基礎研究を行ない、その成果を実際の農業現場に還元できるよう研究に取り組んでいます。

麦類の穂の多様性

麦類の穂は「小穂(しょうすい)」と呼ばれるイネ科特有の花器官が複数集まって構成される。左から4本はオオムギ(二条穂と六条穂)、中央3本はコムギの祖先野生種、右側4本はコムギを示す。

主な研究テーマ

麦類の穂の多様性を生み出す分子機構の解明

麦類の穂は多様性に富み、美しく面白いです。穂あたり粒数は最終的な穀粒収量を左右する農業上極めて重要な形質です。一つの穂に小穂がいくつ作られるか、小穂の中にどの程度の小花が稔実するかによって着粒数が決定します。パンコムギの小穂には最大10個程度の小花が形成されるが、その後の発達過程において約7割の小花は発達を停止してしまいます。この小花発達停止のメカニズムを解明できれば着粒数の向上に貢献できると考えられます。当研究室では世界に先駆けてパンコムギの着粒数を制御する遺伝子の単離に成功し、この遺伝子の利用により粒数を増やすことが可能になりました。一方で穂の形態を制御する遺伝子について未解明な点が多く研究を進めています。

コムギの幼穂発達過程。左: 小穂分化初期ステージ, 中: 小花分化ステージ, 右: 末端小穂分化ステージ(穂あたり小穂数が決まる時期)

作物ゲノムの多様性を拡張する

ある生物の特定の染色体(遺伝子)をヒトの意図のままに付け加えたり、取り除いたり、あるいは別の生物の染色体と交換したりすることは遺伝学、育種学の研究者にとって大きな夢です。遺伝子組換え技術の進展により少数の特定遺伝子を導入すること、ゲノム編集技術の開発により特定の遺伝子に変異を導入することは可能になりつつあります。一方で、染色体レベルで特定のゲノム領域を追加したり、異種ゲノムと交換する技術の開発はほとんど進展がありません。ゲノムを自在に追加・交換する技術は作物の多様性を拡張する可能性を持っており、メカニズムの解明を進めることで新規技術開発に挑戦しています。

パンコムギ品種の中には他の近縁種と容易に交雑できるものがあります。例えばパンコムギとライムギを交配するとライコムギを作ることができますがこれはごく少数派です。大多数の品種では交雑を抑制する遺伝子によって雑種を作ることができません。この遺伝子の解明を目指して研究を進めています。

新規育種素材の開発

既存の品種や遺伝資源の中に有用な遺伝子が見つからない場合、人為的処理によって誘発された突然変異(DNAの塩基配列の変化)を品種改良に利用する方法を突然変異育種と言います。目的に応じて、放射線や化学物質などの変異原を選択し、突然変異集団を養成しています。育成された集団の中から有用な新規の突然変異体を探索し、その原因遺伝子を解明することで育種素材として利用できるようにします。遺伝子が特定できたらゲノム編集技術を活用してピンポイントに改良することも可能になります。

ガラス温室で栽培中の突然変異体の芽生え期。

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