鳥取大学農学部 Faculty of Agriculture, Tottori University

教員詳細

教授

永松 大

Dai NAGAMATSU

所属
生命環境農学科
担当教育コース
里地里山環境管理学
教育研究分野
植物生態学
主な担当科目
基礎生態学,保全生態学,森林生態学
研究に関連する高校教科

研究の概要

森林を中心とした生物多様性を守り地域資源としての活用を考える

生物多様性は階層的な概念で,生きものの種構成を考える種多様性を基本に,種内の変異を生む遺伝子多様性,多様な種がかかわりあってできる生態系の多様性が主な構成要素です。生物多様性の中でも種多様性や生態系の多様性といったマクロな視点から自然林,人工林,草原の植物を対象とした多様性の維持機構や人とのかかわりを考えています。生物多様性の保全とともに,林業など地域資源としての活用も目指しています。

フィールドワークを中心とした生物多様性研究

環境要因や人とのかかわりを基に,野生植物の生活史を主に野外調査から明らかにしようとしています。

主な研究テーマ

森林,草原,湿地等の生態学的研究

森林を中心としたさまざまな植生の特徴やその成立要件,維持機構を明らかにする研究を行っています。森林には自然環境に加えて人間活動も大きな影響を与えており,山陰の冬季多雪(多雨),人間の働きかけ,野生鳥獣などが自然林や人工林に与える影響を研究しています。例えば,山陰には自然がよく残っているとよく言われますが,実態は必ずしもそうではありません。鳥取大学農学部には「蒜山の森」をはじめとした恵まれた教育研究林があり,その森林動態や維持管理も重要な研究テーマの一つです。森林の公益的機能発揮には,面積の広い人工林の生物多様性も重要で,森林認証制度の活用による人工林管理の改善にも取り組んでいます。

孤立化した社叢林の構造を現地調査から明らかにする森林の構成種とその数,サイズを測定する毎木調査のようすです。周囲の森林から孤立化した社叢では,特定の種が欠落したり林縁から外来種の定着が増えたりの変化が生じています。

希少植物の保全など地域の生物多様性維持

今日,生物多様性の保全は世界的に大きな問題です。決して遠い国の問題ではなく,国内でも社会環境の変化などに応じて草原や里山の植物の希少化が進んでおり,絶滅のおそれのある生きものを正確にみつもる必要性はますます高まっています。鳥取県内を中心に希少植物の探索や生育調査をすすめて,鳥取県版レッドデータブックの編集や環境省版への情報集約に協力しています。地域の絶滅危惧植物研究をすすめるとともに,保護団体等と連携して,実際の保全作業にも協力しています。地味で地道な取り組みが多いですが,将来世代に生物多様性を維持したままつないでいくことが重要です。

鳥取県内での絶滅危惧植物の保全活動鳥取県内の山地に,ニホンジカによる食害から絶滅危惧植物を守るための簡易柵を設置しています。保全活動にはマンパワーが必要なため,学生が重要な役割を果たしています。

鳥取砂丘の生態系保全と利活用

温暖湿潤な日本列島では,植生遷移によりほとんどの場所に森林が発達します。水分や養分の保持力が低い砂で構成される海岸砂丘地は,風が強く砂が動くことから土壌が発達せず,自然状態で草原が成立・維持される日本国内ではたいへん希少な存在です。天然記念物「鳥取砂丘」はその典型で,雄大な自然景観とともに海浜草原の生態系はたいへん貴重な存在です。これを維持していくため,鳥取砂丘や山陰海岸を中心に海浜草原生態系の研究をすすめています。鳥取砂丘では生態系保全と観光振興とのバランスが重要で,砂丘管理のプロセスにもかかわっています。

海浜植生の野外操作実験海浜植生はダイナミックに変化し,鳥取砂丘では20世紀後半に植生の増加が起こりました。気候変動が海浜植生に与える影響を明らかにするため,鳥取大学乾燥地研究センターの砂丘で操作実験を行っています。

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