鳥取大学農学部 Faculty of Agriculture, Tottori University

教員詳細

教授

唐沢 重考

Shigenori KARASAWA

所属
生命環境農学科
担当教育コース
里地里山環境管理学
教育研究分野
多様性生物学
主な担当科目
動物生態学,動物分類学概論,動物分類学各論
研究に関連する高校教科

研究の概要

日陰に棲む動物に光を当てる—土壌動物の多様性解明—

私たちが森林に立つとき,その両足の下には160,000匹の動物が生息しています。これら地面に生息する動物は「土壌動物」と呼ばれ,土壌環境を改変したり,陸上動物の餌資源となることで生態系維持に貢献しています。しかし,地上の動物に比べると研究は進んでいません。そこで,私は土壌動物の多様性や生態を解明するとともに,それらの効率的な保全策の構築を目指しています。

これまでの研究対象

土壌に生息するダニ(ササラダニ:左上),ウイルス感染によって青色に変色したアジアモリワラジムシ(右上),日本各地で発見されているアマミサソリモドキ(左下),落葉がほとんど堆積しない沖縄の林床(右下)。

主な研究テーマ

土壌動物の多様性地図を作る!—土壌動物の生物地理学—

生物は地球上に万遍なく分布しているのではなく,固有種が多く生息する地域がある一方で,ほとんど生物が生息しない地域もあります。このような分布の偏り(とその要因)を明らかにすることが生物多様性保全の基本となります!そして,生物の分布の違いを地形や地史(地形の歴史)と関連づけて解明するのが生物地理学です。生物地理学ではこれまで,琉球列島や小笠原諸島など島嶼生態系に生息する固有種が注目を浴びてきましたが,近年,中国地方の各地に固有な生物集団が存在することが分かりつつあります。これら固有な集団がどのように創り出されたのかを明らかにし,適切に保全することを目指しています。

野外観察に加えて様々な統計解析を行うことで未調査地域に生物が分布する確率も計算できます(上:外来種の推定分布域)。また,誰でも気軽に生物分布が調べられるようにweb地図(http://www.warajimushi.com/Map/map.php)の作成も行なっています(下)。

未知の生物に名前をつけろ!—土壌動物の分類学—

地球上からこれまでに名前が付けられた生物として約200万種が報告されていますが,実際には数百万種〜1億種が生息していると考えられています。つまり,名前が付けられている生物種は実際の種数の数%程度,最も多い推定でも50%に過ぎないのです。特に,土壌動物のように地味で小さな動物は,名前がついていない種が多く残されています。名前がついていない生物は効果的に保全することはできません。そこで,私は名前がついていない土壌動物に,できるだけ多く名前をつけることを目標に研究をしています。

分類学の研究では,遺伝子解析(左上)や電子顕微鏡(右上)など様々な手法を用いて,種の特徴を見つけ出します。この特徴が既存の種と異なるとき新種として報告されることになります(下:新種として報告したササラダニ類)。

鳥取砂丘の生物多様性の保全

一見すると動物が生息していないように見える鳥取砂丘ですが,砂地を巧みに利用する動物が数多く生息しています。そして,これらの動物の中には,数多くの絶滅危惧種が含まれています。なぜならば,鳥取砂丘のような砂地環境が日本各地から消滅しつつあるためです。一方で,鳥取砂丘は年間100万人以上の観光客が訪れる観光地でもあります。したがって,鳥取砂丘では観光地利用と生物多様性の保全の両立が求められます。とても難しい課題ですが,私は鳥取砂丘の生態系の仕組みを詳細に解明することで,持続可能な観光利用に貢献したいと考えています。

カワラハンミョウ(右上)など鳥取砂丘には数多くの絶滅危惧種が生息しています。それらの保全と観光地利用の両立を目指して動物の分布や個体数調査を行っています(左上)。例えば,2018〜2019年に絶滅の危機にあったエリザハンミョウ(右下)が,2020年以降には個体数を増やしたことが分かってきました(左下)。注意:鳥取砂丘内における生物の採集は禁止されています。私達は許可を得て調査を行なっています。

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