プログラムの概要(目的)
【背景】
世界中を震撼させた重症急性呼吸器症候群(SARS)や世界中が注目している鳥インフルエンザの流行のような新興・再興感染症の多くが人獣共通感染症であり、野生動物がその原因であることが知られている。このような事件を背景に「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(感染症法)」が改正され、獣医学と医学の協働による人獣共通感染症対策が推進されるようになった。しかし、SARSや鳥インフルエンザが提起した社会不安に対応した教育は、獣医学、医学、いずれの分野でも十分に行われていない。また、現状では野生動物を対象とした獣医学教育は不足しており、さらに野生動物の感染症対策に不可欠な危機管理、行政対応、経済的損失等に関する社会科学教育は全く実施されていない。
一方、近年の社会情勢とニーズの変化を受けて、動物愛護・動物福祉の基盤となる「動物の愛護と管理に関する法律」(動愛法)が2度にわたり改正された。動愛法は、伴侶動物のみではなく、実験動物、産業動物、展示動物、野生動物等を対象としており、平成17年の改正では「動物愛護推進員」という職名も新設された。このように「社会と動物の繋がり」に関する社会的ニーズは急速に高まっており、このニーズに応える動物に関わる専門家の養成が社会的要請となっている。
鳥取大学農学部及び岐阜大学応用生物科学部では、これまで獣医師養成教育を実施してきた。さらに、両大学では、鳥由来人獣共通感染症疫学研究センター、野生動物管理研究センター、COEプログラム「野生動物の生態と病態からみた環境評価」等を通じて人獣共通感染症、環境保全学といった特色ある教育を行っている。一方、京都産業大学では、平成19年に鳥インフルエンザの撲滅を目標に鳥インフルエンザ研究センターが開設され、平成22年度には新たな動物医科学の展開を目指し総合生命科学部 動物生命医科学科が設置される予定である。さらに、京都産業大学には社会科学関連の6学部(経済学部、経営学部、法学部、文化学部、理学部、コンピュータ理工学部)があり、社会科学教育の下地が整っている。
以上を踏まえ、社会科学系分野を加えた3大学連携の獣医・動物医科学系コンソーシアムにより、獣医学、環境保全学及び社会科学の融合をはかり、社会の安心・安全に貢献しうる新しい教育体系を創成する。本プロジェクトでは、この新しい教育を通じ、緊急度及び社会ニーズが高い野生動物や家畜を起因とする社会不安を解消する高度職業人の養成を目的とする。