松本 浩一さん(1997年3月修士修了 農林水産省)
現在、私は茨城県つくば市に在る独立行政法人農業・生物系特定産業技術研究機構中央農業総合研究センター(旧農林水産省農業研究センター)の研究員として、農業の発展のための研究技術開発に対して農業経営の側面からの研究に従事しています。
ここで私が専門に携わっている研究領域は耕種経営の経営管理であり、稲・麦・大豆作を中心とした経営が新たな経営環境の下でどのように経営を維持・発展させるか、そのための方策は何かなどという問題に対する研究です。所属研究室における主要な研究課題は、稲・麦・大豆作に関わる新技術を採用した時に生じる経営への影響を解析することで経営に新技術が採用されるための技術的改善点や社会・経営的条件の摘出(新技術の経営的評価)、新たな米政策改革の水田作経営への影響や地域水田作農業のあるべき姿の実現に向けた方策の解明などです。また、個人的な研究課題としては、農業経営者の意思決定という点に興味があり、農業経営者が新技術も含めた様々な技術の中からある技術を選択する時にどのような過程や要因が関係してくるのかという研究と、持続的な農業経営のためには設備投資が必要不可欠であり、どのような設備をどれぐらいの規模(金額も含めて)で投資をするかという経営者の意思決定を支援するために、設備投資計画の評価をメインとした意思決定支援システムの構築を行っています。
私がいわゆる研究職でメシを喰っていこうと志したのは、鳥取大学時代の学士論文や修士論文の作成がきっかけであったことは間違いありません。この時に未熟ながらも調査や分析を諸先生、諸先輩、学友の協力を得ながら進めていくうちに研究の愉しさを学ぶことができたことが大きいと思います(ただし、現在では研究の厳しさも痛感しています)。この時に培った経験等(論文作成、調査、簿記、計量経済、多変量解析、プログラミング、etc.)は現在の研究生活でも貴重な財産になっています。
松村 剛さん(2004年3月修士修了 JA全農とっとり)
私は、JA全農とっとりで営農指導に関わる仕事をしています。現在は、野菜を担当しており、スイカ、白ねぎ、ラッキョウ、ブロッコリーなど、鳥取県の主要品目の振興に取り組んでいます。具体的には、各JA、農業改良普及所、生産者の代表の方に集まっていただき、作況調査、出荷規格の統一、品種や栽培方法の検討、登録農薬に対応した防除暦の作成などを行っています。
この仕事は、生産から販売までの一連の流れを捉え、問題点を洗い出し、ひとつひとつ問題点を解決していかなければなりません。このことは、私が食料経済学コース(現フードシステム科学コース)で学んだことと全く同じです。
食料経済学コースの魅力は、自ら農業問題を整理していき、最も関心をもった問題に対し、自由にアプローチできることです。私は、有機農業やそれに関わる認証制度について研究を行いました。農家や県庁の方々にお話を聞きに行ったり、アンケートを実施したりと色々と苦労したことを思い出しますが、非常に多くのことを学ぶことができました。
最後になりますが、学生の皆さんには1つだけお願いがあります。それは、農業白書に1度目を通して、日本の抱える主要な農業問題を理解してほしいということです。皆さんの中には、世界へ目を向ける人もたくさんいると思います。でも、まずは日本の現状を理解してほしいと思います。
それでは、学生生活を満喫して充実した日々を過ごしてください。
寿盛 陽平さん(2003年3月修士修了・全日空商事)
・・・ 年度がかわり多少の組織変更があり、それにともなって私も米国のナッツの主担当となりました。そして今日から10日間アメリカ出張にでます。今、成田に向かう電車のなかです。ダイズからは離れてしまいましたが、今後もいろいろと教えていただくことがあると思いますので、宜しくお願い致します。
南谷 貴史さん(2005年9月博士課程修了 ギニア共和国農業省調査計画局技術顧問)
地球温暖化・森林破壊・砂漠化・食糧問題等,将来の私たちの生活を脅かす地球環境問題にどう対処していくかは,農学を研究する我々にとって大きな課題です。こうした問題を解決するには「技術」が必要となりますが,すばらしい技術でも,それ一つでは大きな効果を生むことはできません。また,最先端技術が,あらゆる条件で有効とは限りません。
開発途上国に対する技術協力プロジェクトが必ずしも成功してこなかったことを見れば,単なる近代技術の導入が持続的開発に繋がらないことは明白です。その国の,または地域の環境や社会経済的条件に適合し,住民の主体性や持続性を考慮した「適正技術」を見つけ出し,また組み合わせることで,地球環境問題に取り組んでいくことが望まれます。食料経済学は,広い視野で国際的な農業問題を見つめ,問題の本質を追究し,その解決策を研究する学問です。地球環境問題の改善に向けて,今,技術をマネージメントする能力が求められています。