研究マップ (現在更新中)

研究室でこれまで行ってきた,もしくは行っている研究対象地の分布図です.海外と国内でレイヤーが分かれています.


現在取り組んでいる研究テーマの一覧 (現在更新中:完成度70%)

現在本研究室で取り組んでいる研究テーマを,「水」「土」「緑」という3つのグループに分類してみました.便宜上全てのテーマを3つのグループのどれかに分類さしましたが,環境・農業を考える上で,「水」「土」「緑」は全てつながった共同体であり,多くのテーマは「水」「土」「緑」の複数の要素に関係しています.また,2014年以降に取り組み始めた研究テーマには「NEW」が付いています.

「水」に関する研究テーマ

  • 地下流水音を用いた地下水動態の把握 NEW
  • 鳥取砂丘オアシスの発生・消滅メカニズムの解明  ~オアシスの水はどこから来てどこへ行くのか?~
  • 植物の吸水・成長モデルと天気予報を用いた灌水量の最適化 (シミュレーション灌漑・精密農業) NEW
  • パレスチナ西岸地区におけるウォーターハーベスティングによる食料安全保障の強化 NEW

「土」に関する研究テーマ

  • 表層吸引溶脱法の開発・評価と震災塩害土壌の除塩の試み
  • 誘電率水分計の温度・塩依存性校正に関する研究
  • キャピラリーバリアによる塩類集積の改善と予防 NEW
  • 農耕地の水土環境の保全に関する基礎研究 (ウィックサンプラーによる土壌浸透水採水)
  • 砂丘ナガイモの黒陥没障害発生要因の特定
  • 乾燥地・半乾燥地に展開する農地の持続的利用のための除塩・防塩システムの構築 (排水トンネル) NEW
  • フィリピン・ネグロス島サトウキビ畑における地下水の窒素汚染の評価とモニタリング手法の検討 NEW

「緑」に関する研究テーマ

  • 水(酸素)安定同位体比分析を用いた乾燥地樹木の水利用特性の解明
  • 誘電率土壌水分計(GS3)を用いた樹体水分モニタリングによる乾燥地樹木の水利用特性の解明
  • 樹木の水利用特性解明のための樹液流速・樹体水分量の同時測定および測定方法の開発 NEW
  • 壁面緑化ボード(ユニット型壁面緑化)の低コスト・省エネルギー型水管理に関する研究
  • 適切な灌漑管理のための半乾燥地樹木(オリーブ)の水ストレス指標の評価
研究室分属を検討している学部三年生へ
2015年 研究室分属説明会資料がダウンロードできます
水土環境保全学分野(猪迫)
地圏環境保全学分野(齊藤)


「水」に関する研究テーマ

UAV(ドローン)を用いた鳥取砂丘の3次元モデルの作成とその利用 NEW
乾燥地研究センター・鳥取県砂丘事務所との共同研究,鳥取大学地域貢献支援事業ほか (主担当:齊藤)
鳥取県における貴重な観光資源である鳥取砂丘は,砂の移動や植生の繁茂に伴い刻々と姿を変えます.このような,砂丘の地形や地表面状態の簡易な把握手法の開発が学術・環境・観光といった多方面から強く望まれています.そこでUAV(ドローン)を用いて砂丘全域を空撮し,撮影画像をSfM-MVS技術を用いたソフトウェアで処理することにより,砂丘の3次元モデルを作成し,様々な用途に利用しています.具体的な目標としては,①砂移動解析を可能とする空中写真測量の高精度化・簡易化,②植生変遷のモニタリングを目的とするマルチスペクトル(MS)カメラによる空撮および植生指数(NDVI)マップの作成手法確立,③標高データと地中レーダー探査と組み合わせた広域地下水・地下構造の把握などがあります.


  
3次元モデルの試作品をYoutubeにアップロードしてみました.
是非一度ご覧ください.
   
鳥取砂丘


鳥取大学乾燥地研究センター


地下流水音を用いた地下水動態の把握 NEW
森林総合研究所・新潟大・鳥取県林業試験場・株式会社拓和との共同研究 (主担当:齊藤)
地下水は貴重な水資源であると同時に,土砂災害などを招く因子ともなっており,この動態を把握することは極めて重要です.しかし地下水は地上から見ることが出来ず,その動態把握のためには通常高価・複雑な機器等が必要です.そこで現在,安価かつ簡便な地下水動態把握を可能とするため,地下水が流れるときに発生する微細な音を探知して地下水動態を把握する装置が開発中されています.装置開発者や制作会社と協力しながら,装置の性能向上のための実験や,鳥取の砂丘・鳥取県内の山地斜面等において地下水動態把握の研究をしています.また,地中流水音探査と同時に地中レーダー探査を実施することにより,流水音探査の精度検証も行っています.

株式会社拓和の地下流水音装置の特設サイト
http://www.mizumichi.jp/
測定原理や活用事例が紹介されています.実際に流水音を聞くこともできます!

鳥取砂丘オアシスの発生・消滅メカニズムの解明  ~オアシスの水はどこから来てどこへ行くのか?~
乾燥地研究センター・鳥取県砂丘事務所との共同研究,鳥取大学地域貢献支援事業ほか (主担当:齊藤)
鳥取砂丘には年間を通じ枯れることのない「湧水」と,発生消滅を繰り返す「オアシス」が存在し,その水と砂との美しいコントラストは砂丘を訪れる多くの観光客の目を楽しませています.このオアシスの水がどこから来てどこへ消えてゆくのかは古くからの学術的関心事であり,2010年に鳥取砂丘を含む山陰海岸が世界ジオパークに認定されたことも相まって,オアシスの発生消滅メカニズムの解明が強く望まれています.そこで,本研究室では2010年より各種水文観測,水の安定同位体比分析,地中レーダー探査等を駆使し,このオアシスの発生消滅メカニズムの解明に取り組んでいます.これまでの調査から様々なオアシスの謎や不思議が明らかとなってきましたが,まだ未解明の謎も多く残されています.


研究成果の例
 http://soil.en.a.u-tokyo.ac.jp/jsidre/search/PDFs/13/13006-22(P).pdf

一般の方向けに,これまでに明らかになってきたオアシス発生消滅メカニズムをまとめたサイトを作成予定です!

植物の吸水・成長モデルと天気予報を用いた灌水量の最適化 (シミュレーション灌漑・精密農業)
乾燥地研究センターとの共同研究 (主担当:乾地研 藤巻教授・齊藤)
水資源が乏しい乾燥地農業において高い収益をもたらすには適切な灌漑管理が必要であり,過不足の無い灌水のための各種センサーを用いた自動灌漑システムの研究が進んでいます.しかし高い初期費用や,天気予報を考慮した調整を行いにくく (例えば明日沢山雨が降るのに,センサーが自動で灌漑をしてしまう等),降雨を有効利用しづらいなどの短所があります.一方,近年数日後の数値天気予報が高い精度で可能になったことや,数値解析を行うパソコンの低価格化による一般的な農家への普及率向上に伴い,天気予報を数値解析の入力データとして適切な灌水量の決定を可能とする技術的条件が整いつつあります.そこで本研究では,センサーを用いた自動灌漑システムによる灌漑方法と,数値天気予報と土壌物理シミュレーションモデルを組み合わせて算出した灌漑水量に基づく灌漑方法で圃場実験を行い,仮想の価格設定による純収入を比較することで後者の効果を評価することを試みています.これまでチュニジアの圃場や乾燥地研究センターの圃場での検証実験が行われてきました.


※ 本研究は乾燥地研究センター・藤巻教授が中心となって進めている研究です.もし本研究に取り組んでみたい学部生がいた場合,所属は本研究室(農学部・環保)ですが,実際の実験・指導は乾燥地研究センターで行なわれることになります(学部生にとって乾燥地研究センターで研究をするチャンスとも言えます).

研究成果の例
http://soil.en.a.u-tokyo.ac.jp/jsidre/search/PDFs/14/S6-2.pdf

パレスチナ西岸地区におけるウォーターハーベスティングによる食料安全保障の強化 NEW
乾燥地研究センター・藤巻教授らとの共同研究・JSPS二国間交流事業 (調査実動:齊藤)
パレスチナは1967年の第3次中東戦争以来イスラエルの占領下に置かれ,ヨルダン川の水や西岸地区の地下水の82%がイスラエルに接収されています.井戸の新設は原則として禁止されており,既存井戸の改修さえもイスラエル当局の許可がなかなか下りず,多くの農民が水不足に直面し,食料増産の大きな制約要因となっています.そこで,乏しい水資源を最大限活用して食料を持続的に増産するために期待される技術の一つが,斜面を流下する水を捕捉して土壌や貯水池に貯留し,作物生育に必要な水を確保するウォーターハーベスティング(WH)です.現在,ラマッラ近郊の谷の北側斜面において,オリーブが植栽されたテラスWHにおける流出率・気象観測を,南側斜面では不透水シートを用いた集水・灌漑の実験を行っています.


 

「土」に関する研究テーマ

誘電率水分計の温度・塩依存性校正に関する研究
乾燥地研究センターとの共同研究,科研ほか (主担当:齊藤)
近年開発された誘電率水分計は,土壌中の水分量(体積含水率)の非破壊かつ経時的モニタリングを可能とするツールとして,生物・農業・気象・工学といった分野の研究・実用両面で広く普及しています.しかし,その出力値は,土壌中の塩濃度・温度の変化によって強く影響を受ける場合があることが知られています.この問題を解決するため,室内実験による塩・温度の影響を考慮した誘電率水分計の出力値校正法の開発や,塩・温度依存性の理論的背景の解明に関する研究を進めています.また,温度依存性の校正に関しては,室内実験を用いずに現場時系列データの解析から校正式を導く手法も提案してます.得られた結果を,宮城県の津波塩害土壌の除塩モニタリング結果や,フィリピンにおける窒素溶脱モニタリング結果樹体水分モニタリング結果等に適用していきます.


研究成果の例
http://thescipub.com/PDF/ajessp.2008.683.692.pdf(塩依存)
https://js-soilphysics.com/data/pdf/109015.pdf(温度依存)
https://www.soils.org/publications/sssaj/abstracts/73/6/1931?access=0&view=pdf(温度依存+理論背景)
https://dl.sciencesocieties.org/publications/vzj/abstracts/12/2/vzj2012.0184(現場時系列データを用いた温度依存校正)

表層吸引溶脱法の開発・評価と震災塩害土壌の除塩の試み
東洋ゴム工業(株)との共同研究,JST-研究成果展開事業 研究成果最適展開支援プログラム(A-STEP) (主担当:猪迫)
塩類集積土壌の修復には,一般的にリーチング法(多量の水を土壌に供給し集積した塩を溶解させて下層に浸透排除する)が用いられます.しかしリーチング法は低塩濃度の多量の水を必要とし,また塩害未発生地に塩が流入する二次的塩類集積を誘発する危険性があります.そこで本研究室では,表層に塩がスポット状に集積する塩類集積の初期段階において,土壌に少量の水を供給し集積塩を溶解させた後に,土壌水を表面から吸引排除する除塩法「表層吸引溶脱法」を提案し,装置の開発・改良や異なる土性・運転条件下での除塩効率の検討を行ってきました.また,東洋ゴム工業(株)と共同で,装置と地面の密着度を高め除塩効率を向上させるフィルタの開発や,宮城県の津波塩害農地における装置の検証実験を行ってきました.


     
特許取得:
 表層吸引溶脱装置用カバー、表層吸引溶脱装置および表層吸引溶脱方法
http://www.cjrd.tottori-u.ac.jp/seeds_cgi/files/20120124124545_pdffile02.pdf(特許内容の説明)

乾燥地・半乾燥地に展開する農地の持続的利用のための除塩・防塩システムの構築 (排水トンネル)  NEW
(主担当:猪迫)
土壌には透水性の高いものから低いものまで様々なものがありますが,塩害はどのような環境でも起こりうる問題です.土壌の透水性に応じた管理方法があるはずでそれを統合させた新システムを構築することを目的に研究を行っています.具体的には,土層内に一部透水性の良い土性の「排水トンネル」を設置し,塩を含むリーチング水を速やかに作土層から排水するシステムや,さらにこの排水トンネルと粗粒層(キャピラリーバリア:CB)を組み合わせるシステムを検討しています.


 

キャピラリーバリアによる塩類集積の改善と予防 NEW
SATREPS:メキシコ・持続的食料生産のための乾燥地に適応した露地栽培結合型アクアポニックスの開発  (主担当:猪迫)
地下水位の高い土壌では,容易に毛管上昇が生じ,塩類集積が発生します.このような農地では,大量の水を使って,表層の集積塩を地下に洗い流しても,すぐに上昇して再集積してしまいます(二次的塩類集積).これに対し,作土層中に粒径の粗い土層を意図的に作って毛管上昇を阻止し,塩類集積を防止する方法があります.これをキャピラリーバリア(CB)といいます.本研究では農学部・植物栄養学分野との共同研究として,このシステムをアクアポニックスシステムと融合させて,乾燥地における新しい節水栽培方法として確立することを目指しています.アクアポニックスは、水産養殖(Aquaculture)と水耕栽培(Hydroponics)の排水を循環利用するシステムです.現在は大学構内のハウスで検証実験を行っていますが,今後はメキシコでの実証実験を行う予定です.


SATREPSプロジェクトの基本情報

農耕地の水土環境の保全に関する基礎研究 (ウィックサンプラーによる土壌浸透水採水)
鳥取大学乾燥地研究センターとの共同研究 (主担当:猪迫)
農耕地の土壌や地下水は過剰な施肥によって汚染されています.しかし,種々の物質がどのようなメカニズムでそれらを汚染しているかについてはまだ正確に解ってはいません.本研究はそれを明らかにするためのもので,地下へ浸透する水とそれに溶け込んでいる様々な物質量を定量化するための土壌浸透水採取装置「ウィックサンプラー」の開発と実証実験を行ってきました.ウィックサンプラーはガラス繊維糸を縒り合わせた芯(ウィック)自身の毛管力により,採水面に負圧を与えて集水し,系外に送水する構造となっています.比較的安価で構造も単純であるため,多点への設置も可能です.これまでにラッキョウ栽培砂丘圃場での実証実験が行われてきましたが,想定よりも過剰な採水がされることがあるため,この現象の解明のためにもHydrus(水移動シミュレーション)や室内実験による検証が続けられてきました.また,現在フィリピンのサトウキビ畑において窒素溶脱のモニタリングに用いられています.


研究成果の例
http://soil.en.a.u-tokyo.ac.jp/jsidre/search/PDFs/08/08005-22.pdf
http://soil.en.a.u-tokyo.ac.jp/jsidre/search/PDFs/09/09P03-14.pdf

砂丘ナガイモの黒陥没障害発生要因の特定
鳥取県園芸試験場砂丘地農業研究センターとの共同研究,鳥取大学地域貢献事業ほか(主担当:猪迫)
近年,鳥取名産砂丘ナガイモには「黒陥没」という生理障害が発生しており,この障害によるナガイモの品質(商品価値)の低下が問題となっています.この発生原因は未だ不明ですが,窒素の過剰施用と溶脱傾向にカギがあるとにらんでいます.そこで,鳥取県砂丘地農業研究センターとの共同研究で,黒陥没障害が多発している北条砂丘のナガイモ砂丘畑において,施肥条件の異なる処理区を設け,土壌水分と電気伝導度の3次元分分布,スプリンクラーによる散水の空間分布,微気象環境等をモニタリングし,「黒陥没」発症との関連生を明らかにしています.毎年実施される長芋の植え付けと長芋の掘り取りは研究室メンバー総出の楽しい調査となっています.


  
研究成果の例
http://soil.en.a.u-tokyo.ac.jp/jsidre/search/PDFs/14/4-12(P).pdf

フィリピン・ネグロス島サトウキビ畑における地下水の窒素汚染の評価とモニタリング手法の検討 NEW
JIRCAS(国際農林水産業研究センター)との共同研究 (調査実動:齊藤)
フィリピン・西ネグロス州ヴィト川流域は,典型的なサトウキビ単作地帯です.栽培に際しては肥料が投入されますが,肥料に含まれる硝酸態窒素が地下水を汚染している可能性が指摘されています.そこでJIRCASが中心となり,地下水の窒素汚染評価手法の開発と地下水の窒素汚染軽減マニュアルの策定のための調査研究プロジェクトが進められています.現地の調査圃場において基肥溶脱特性解明のための各種観測機器(パンライシメータ,誘電率水分・塩分計等)を用いた土壌溶液の採取・溶質移動モニタリングが実施されていますが,本研究室ではこれまで培ってきた観測技術(ウィックサンプラーを用いた土壌溶液の採取誘電率水分計の塩依存性の校正など)を活かして,使用する機器の選定・設置や,省力かつ効率的なモニタリング手法の検討に対するお手伝いをしています.

 

「緑」に関する研究テーマ

水(酸素)安定同位体比分析を用いた乾燥地樹木の水利用特性の解明
乾燥地研究センターとの共同研究,科研費ほか (主担当:齊藤)
乾燥地の樹木には過酷な環境を生き抜くため,様々な生理・生態学的特徴があります.本研究では樹木の水利用特性の解明のため水の安定同位体比に着目しています.水の安定同位体比とは端的にいえば「その水を構成する水分子の重さの違い」であり,その水の経た凝集・蒸発過程によって変化します.例えば地表近くの土壌水には蒸発の影響で重い水分子が多く含まれることになります.また,根から吸収された水の安定同位体比は,樹体内を流れる水の輸送過程では変化しないという特徴があります.したがって,樹体内の水の安定同位体比と地下水・降雨水・土壌水の安定同位体比を比較することで,樹木が「いつ」「どの位置から」水を吸水しているかを解明しようとしています.現在の対象樹木はスーダンの外来侵入種:メスキート(Prosppis juliflora)及びアメリカの在来種:スクリュービーンメスキート(Prosopis Pubescens)と外来侵入種:タマリスク(Tamarix ramosissima)です.なお,本研究は樹体水分モニタリングの研究と連動して行っています.今後はモンゴルの草本植物も対象とする予定です.


   
樹体や土壌から同位体比を変化させることなく水サンプルを抽出するためにの真空蒸留装置を作成しました(三重大学・松尾研にご協力頂きました).もし上記のような研究に興味がある方がおりましたらサンプルの持ち込みを歓迎いたしますのでご連絡下さい.

研究成果の例
http://nodaiweb.university.jp/desert/pdf11/29-32_Saito.pdf

誘電率土壌水分計(GS3)を用いた樹体水分モニタリングによる乾燥地樹木の水利用特性の解明
乾燥地研究センターとの共同研究,科研費ほか (主担当:齊藤)
乾燥・半乾燥地域における樹木類は,過酷な環境下で生き延びるため,少ない水資源を効率よく使う機能を有しており,その一つは,吸水・送水・蒸散の量とタイミングをコントロールする機能です.この水利用戦略を解明することで,樹種に応じた適切な灌漑や水管理法の選択や,外来侵入種の効果的な防除対策の考案が可能になると考えられます.本研究では,土壌水分の測定に利用されている誘電率水分計を用いて乾燥地樹木の樹体内水分をモニタリングし,雨期と乾期における樹体内の水分変動特性や,利用する水の水源を解明することを目的としています.現在の対象樹木はスーダンの外来侵入種:メスキート(Prosppis juliflora)及びアメリカの在来種:スクリュービーンメスキート(Prosopis Pubescens)と外来侵入種:タマリスク(Tamarix ramosissima)です.なお,本研究は樹体内水の同位体分析の研究と連動して行っています.また,樹体水分の正確な測定のためには,誘電率水分計の温度依存性校正の研究も重要です.


 
研究成果の例
http://soil.en.a.u-tokyo.ac.jp/jsidre/search/PDFs/13/13004-38.pdf

樹木の水利用特性解明のための樹液流速・樹体水分量の同時測定および測定方法の開発 NEW
乾燥地研究センターとの共同研究 (主担当:齊藤)
樹木の水利用特性を解明のために用いられている手法として代表的なものに樹液流測定があります.これは樹木というパイプの中を流れる水の速度を計測するもので,これにより樹木がいつどれくらいの水を利用しているのかが分かります.また,その一方で,近年樹体が水を通すパイプとして機能するだけではなく,樹体に水分を貯留し,蒸散時に利用しているといった報告もされています.このことから,樹木の水利用特性解明のためには,樹液流速だけでなく樹体水分量を測定することも重要と考えられます.しかし,樹液流と樹体水分量の同時測定を行った研究例は非常に少ない状況です.また,これらを同時に測定できるセンサはなく,樹体の同一の点で測定ができた事例もありません.そこで,本研究では樹液流速・樹体水分量の同時測定を行い,樹木の水利用特性解明におけるそれらの重要性の確認をするとともに,単一のセンサによる樹液流速と樹体水分量の同時測定方法の開発を行うことを目的としています.現在,大学構内のタブノキを対象として研究を行っています.


 

壁面緑化ボード(ユニット型壁面緑化)の低コスト・省エネルギー型水管理に関する研究
 ジャパン緑化との共同研究 (主担当:猪迫)
ユニット型壁面緑化は植物と植栽基盤を一体化させて壁面に設置する緑化形式であり,他の壁面緑化形式(登はん型など)よりデザイン性が高く蒸発量が多いことが特徴です.しかし,植栽が垂直方向となるため植栽基盤内に水分分布の差が生じやすく,灌水設備が必須とされており,一般に施工・維持コストが高いです.そこで本研究では,植栽基盤上部への降雨集水面の設置,植栽基盤内への多孔質チューブの挿入による植物の水需要に応じた自動灌漑(地中点滴灌漑の応用)などを試み,低コスト・省エネルギー型の灌水方法としての確立を目指しています.


研究成果の例
http://soil.en.a.u-tokyo.ac.jp/jsidre/search/PDFs/11/11007-14.pdf

適切な灌漑管理のための半乾燥地樹木(オリーブ)の水ストレス指標の評価
ITPプログラム:イタリア・CHIEAM (主担当:猪迫)
オリーブは半乾燥地域の農業生産を支える重要な農作物であり,近年その収穫量は増大しています.オリーブの栽培にはしばしば灌漑が用いられますが,オリーブの受ける水分ストレスを的確に把握することが出来れば,オリーブの必要とする水量を適切に灌漑することが可能となります.本研究では,異なる灌漑条件区を設けて,それぞれの区における土壌水分,樹体内水分,樹液流速(サップフロー),気孔コンダクタンス等をモニタリングし,それぞれの水ストレス指標が気象・灌漑条件にどのように応答するかを明らかにしています.これまで2名の修士学生が,ITPプログラムでイタリア・CHIEAMに派遣され本場のオリーブを用いた実験をしてきましたが,今後は乾燥地研究センターのライシメーター内にオリーブを植え,ここでも同様の実験を実施しようとしています.また,新たな水分ストレス指標として,葉の膨圧を測るセンサーの導入も検討しています.