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Mr. PATRICK Mgcini Khumalo
スワジランドは、いまだ国全体をまかなうに十分な食糧を生産できていない。その状況は急激な人口増加、高い失業率などによって悪化しており、仮に現状のまま進むと、国運も危ぶまれる状況となりかねない。小規模農地の所有者を育成して組織化することがスワジランド政府の農業生産に関する問題緩和政策の主眼となっている。しかしながら、生産力は管理上の問題、ずさんな設計・計画、計画および送水施設の設置に参画する農業従事者の不足やその他我々がまだ認識していない多くの問題によって、依然達成されていない。
農業・工業両セクターにおける水の重要性は言及するまでもない。スワジランドの水資源の利用は主に大規模農地への灌漑、大規模工業地への送水であり、これにより電力需要が伸びている。スワジランドの灌漑農業の主たる目標は、水資源利用の最大化と最適化、集水域保護および最大限の収量の達成にある。水利を最大限に拡大するためには、次のような様々な要因に依存する灌水の有効利用を含む:すなわち、灌漑諸元計画(スケジューリング)、ブロックごとの灌漑(ローテーション)、配水の均一性、排水と地下水位の管理および農家の人々の灌漑に対する態度や心構えなどである。これらすべての変数が相互に織り混ざっているのである。
以下に、スワジランドにおける灌漑開発の妨げとなる幾つかの問題点を述べる。:
灌漑開発を促進するための政策及び戦略的見通しの不足;施設容量上の制限;水開発に関わる農業省のばらばらな組織構成;小規模灌漑開発および季節毎投入の両面における資本投資の信用取引施設の不足;現行の灌漑事業におけるずさんな管理;農家間の農産物商取引活動の不足;幾つかの土地での農業方法のまずさによる農家のために働くスタッフの不足;水に関する法律と水に関する組織の存在が皆無;生産現場が市場から非常に遠距離にあること;利用可能な水がないため、農家の水利権が行使できない;古い灌漑事業では管理機構の不在が水の過剰使用を引き起こしていることなど。結果として、国の多くの地域で非常に低い農業生産量にとどまっている。
水利効率(WUE)は、スワジランドでは依然非常に低く、平均60〜65%であり、水消費者および計画立案者に問題克服のための課題を投げかけている。均等配水は、農家の農地区画ごとに均等に水を配分することであり、持続可能な灌漑農業を進める上で関心を惹く課題である。頭と尾っぽ、つまり傾斜農地の上部と下部において均一に灌水を供給できないのが、スワジランドの灌漑における配水のまずさの最大の要素とみなされている。調査の結果、灌漑諸元の計画、配水、管理構造の整備、排水と地下水位の管理、灌漑計画と実施における農家の参画などがスワジランドの灌漑開発を進める上で主な要因と特定されている。また多くの調査において、灌漑事業は農家に負担となることが結論づけられており、それゆえ農家は事業に対して消極的な態度を持つに至っている。
灌漑農業の開発は農業生産の多様化をもたらし、これによって食糧増産も可能となる。灌漑システムでは、農地の単位面積毎に多額の投資がなされ、作物の集約的生産が行われる。これに付随して、高い収入をもたらす作物生産への要求が生じる。従って経済的に農家を魅了するためには、灌漑事業は農業システム全体の効率と安定性を向上させるものでなければならない。そしてなおかつ、現在の投資価値を増加させなければならない。他の産業部門などに比べて報酬がより期待できることを証明しなければならない。灌漑は乾燥地・半乾燥地における気象変動からくる危険性を軽減する。単位面積あたりの収量を増加させ、作物生産系全体の多様性を付加する。灌漑はまた、作物の質向上、量増収と同時に農家に他の農法の選択の余地を広げることが可能である。
灌漑事業を発足することは非常にコストがかかるにも関わらず、スワジランド政府は灌漑を拡大することを支持している。しかし、政府の援助は最小限にとどまっている。にも関わらず、スワジランドの灌漑は、もし農家が長期にわたって経済的に投資を望み、もしローンが灌漑開発にも利用可能であれば、経済的に利益をもたらすものとなる。政府は農家に対し、特に送水路および配水本管路の建設において援助することが必要であり、農家はシステムを保全していくことが期待される。
日本で得た知識と経験について述べることには価値がある。水開発機構および灌漑技術における日本の専門知識は圧倒的である。技術的開発の面において本コースは、新しい発見の連続であった。日本の人々が物事を行うにあたっての態度は多くの示唆に富んでいた。日本において学んだ幾つかの良き事について重点を述べると、日本人は非常に熱心に働く人々であること、高品質の標準を保持していること、興味深い灌漑システムすなわち「知能的灌漑」と称される高度な節水技術を開発したこと、ハイテク・ダムを建設していること(地表ダムおよび地下ダム)、砂丘地圃場において効果的な作物生産を行っていること、高価な作物の高度な管理を実行していること、河川においてハイテクを用いて洪水を防止し、塩水遡上を防止していること、そして政府により農家のためのダム開発および灌漑システム開発が実施されていること、地下深くに浸透した水を地下ダムを通して揚水し、地表面の土地利用を妨げることなく、配水を行っていることなどである。日本で見学した技術の幾つかは開発国には高額すぎるが、その他は投資可能で私たちの国にもそのままもしくは修正して適用するべきものである。私は、アクションプランにおいて、スワジランドの使用に推奨するべき技術について記述している。
したがって、灌漑開発を持続的なものにするためには、計画立案者は上記のような問題を考慮し、すべての所有権・利害関係を有する人々(既得権者)、NGO、受益者、農家とともに働いている外郭団体スタッフを招集して、包括的な戦略的プランニングと包括的アクションプランを策定することが重要である。アクションプランは、すべての人々の共同作業として、良き利用のために実行に移されなければならない。増加の一途をたどる国の人口(増加率3.4%)を支える持続的灌漑事業の開発は、私たち全員にとって取り組むべき大きな課題であり、大きなチャンスである。私は、すべての既得権者が水利管理に参画し、専門家たちの助言にしたがって実行すれば、水管理は改善されると信じ、願うものである。これに類似して、水利効率も平均60%から70%に上昇し、これに付随して作物生産量および収量も増加するものと信じ、期待する。