鳥取大学農学部 Faculty of Agriculture, Tottori University

教員詳細

教授

木場 智史

Satoshi KOBA

所属
共同獣医学科
講座
基礎獣医学
教育研究分野
獣医生理学
主な担当科目
生理学A、生理学C、生理学実習

研究の概要

自律神経を切り口に、健康を理解し、未来医療を創る

 運動やストレスで自律神経の働きが急に変わります。病気になると自律神経の働きが悪くなり、その状態が長く続いたりします。また、運動が体に良い理由も、自律神経の働きがよくなることが関わります。自律神経をコントロールする源は脳です。では、脳はどのようにして自律神経や健康をコントロールしているのでしょうか? 私たちは、脳の神経回路を調べることで、そのしくみを明らかにしようとしています。

自律神経の研究から目指す未来

 脳とからだをむすぶ自律神経は、ほとんどすべての病気や体の不調に関わっています。私たちは、生命を支える自律神経のしくみを詳しく調べ、健康を保つ方法や病気を治す新しい手がかりを探しています。こうした研究を通して、人や動物の未来医療の開発や新しい学問の発展を目指しています。

主な研究テーマ

運動やストレス時のからだの状態をすぐに変化させる脳のしくみは?

 ヒトや動物が運動したりストレスを感じたりすると、脳がすぐに働いて交感神経や副交感神経の活動が変化し、心拍数や血流、血圧、呼吸など体の状態が時々刻々と調整されます。私たちの研究では、生きた動物を使ってこれらの自律神経のはたらきを支える脳メカニズムを調べています。生体信号の記録、動物行動や組織の解析、組織や遺伝子工学/ゲノム編集などの技術を使って、脳の中でこうした調整がどのように行われているのか、その仕組みを脳の神経回路の解析から明らかにしようとしています。

 A:脳の中にある神経のつながりを、顕微鏡で観察した写真。矢印は、赤い神経から水色の神経へ信号が伝わる「シナプス」と呼ばれる部分を示しています。B:脳の神経のはたらきを調べた実験。ある神経の集まりを青い光で刺激すると、動物が走り回るようになり、同時に血圧や心拍数も上がりました(Koba et al. Nature Communications, 2022を改変)。

からだの状態の健康と異常(病気)を担う、脳のはたらきの違いは?

 自律神経はほとんどすべての病気に関わっているといっても過言ではありません。たとえば心不全や高血圧などでは、交感神経の活動が高くなり、副交感神経の働きが弱くなっています。私は、健康なときの脳の神経回路と、病気のときの神経回路を比べることで、自律神経のバランスがどう保たれているのか、またそのバランスがくずれる原因は何かを調べています。

 心臓の働きが悪くなる(心不全)と、脳が悪いように影響され、自律神経系の働きがおかしくなります。心不全では脳がどのように変わるのか、また脳のどこが変わるのか、分かっていません。

心も体も満たされた生活は、どのように脳の働きを変えて、健康増進・疾患克服に役立っている?

 Exercise is medicineとも言われるように、運動には健康を高める力があります。運動を取り入れた心も体も満たされた生活(ウェルビーイング)は、人や動物の健康の土台です。この効果には自律神経のはたらきが深く関わっていると考えられますが、それを調整する脳の仕組みはよくわかっていません。私たちは、運動や豊かな環境が脳にどう働きかけ、自律神経をどのようにコントロールするのかを調べることで、健康を守る脳の仕組みの解明や、未来の医療に役立つ新しいアイデアの発見を目指しています。

Exercise is medicineメカニズムが分かることで期待される、社会への効果

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