教員詳細
講師
石川 拓郎
Takuro ISHIKAWA
- 所属
- 共同獣医学科
- 講座
- 基礎獣医学
- 教育研究分野
- 獣医解剖学
- 主な担当科目
- 解剖学実習、組織学実習
研究の概要
高悪性度がんで活性化する分子経路を標的とした制がん戦略を築く
がん細胞は、上皮間葉転換(EMT)と呼ばれる現象を通じて、上皮系から間葉系へと形質を変化させ、浸潤・転移能や薬剤耐性などの悪性形質を獲得します。EMTを経た間葉系がん細胞では、上皮系細胞とは異なる分子経路が活性化していると考えられます。こうした経路の違いを明らかにすることで、間葉系がんの弱点や悪性形質の分子基盤を解明し、悪性度の高いがんに対する治療戦略の提案につなげたいと考えています。
主な研究テーマ
間葉系がん細胞に対するスタチン系薬剤の制がん機序の解明
血中コレステロールを下げる薬として広く使用されているスタチンには、制がん効果があることが報告されています。特に、上皮系がん細胞と比べて、間葉系がん細胞に対して顕著な効果を示すことが分かっています。本研究では、ヒトおよびイヌの様々ながん種に由来する細胞株を用いて、その感受性の違いをもたらす分子基盤の解明を試みています。スタチンによる脂質合成の阻害が細胞内シグナル伝達に与える影響を多角的に解析し、間葉系がんの分子特性に応じた有効な治療法への応用を目指しています。

スタチンの制がん機序の一つを示した模式図(図A)。間葉系がん細胞では、スタチンの作用により転写共役因子であるYAP/TAZの核移行が阻害され(図B)、これにより細胞増殖や生存に関わる遺伝子群の発現が抑制される。