学部長メッセージ
農学が世界において果たす役割は、近年飛躍的に拡大しています。私たちが直面するのは、食糧供給や価格高騰の問題、環境汚染や生物多様性の喪失の問題、地球温暖化やエネルギー安全保障の問題、人口の偏りや経済の持続性の問題、生活や心の豊かさを損なう諸問題など、様々な難問が山積し、複雑に絡み合う世界です。これらの問題を解決する上で、農学が取り組んできた知識と技術は、極めて重要な役割を果たすと、多くの期待が寄せられています。
本学農学部では、生命科学などを含む自然科学、生産農学、獣医学、環境科学、農業工学、森林科学、社会経済学などの広範な学びを通して、自然と社会がどのような仕組みで動くのか、基盤の理解を進めています。加えて、世界で実践されている様々な事例に触れ、また自分の身体を用いた農学の体験を重ねて、実践的な人材、すなわち「やり方がわかる」「判断ができる」「仕事ができる」人材の育成を進めています。
本学農学部は、百年を超える長い歴史と実績を有し、乾燥地科学研究や、二十世紀梨の研究、鳥インフルエンザの研究など、世界に誇る顕著な農学的貢献を多く成し遂げ、さらに高いレベルでの実践的挑戦が進められています。本学農学部には、世界最大規模のきのこ遺伝資源を用いた教育研究や、最先端の医療機器を用いた動物医療の実習、教育研究林での様々な実習、徒歩圏内の広大な実験圃場での実践的な生産農学など、全国の農学部の中でも稀有な環境のもと、先駆的な教育研究が進められています。獣医学の基礎研究、里山の生態系や持続的経済に関する教育研究、地域生物資源を活用した食品や産業資材の開発なども盛んです。これらの活動では、地域における問題解決を目指したローカル展開のみならず、長い交流の歴史を持つ海外実践プログラムや国際研究交流などのグローバル展開も併せ持ち、国内外の多くの産官学パートナーと、相互の人材育成と、社会・学術貢献を両立させてきたノウハウを持っています。
鳥取は学生の多い街で、本学農学部へも、多様な学生がトビラをたたきます。自分の目標が明瞭な学生にとっては、自己を研鑽し「なりたい自分になる」修養の場を、自分のキャリアを模索する学生にとっては、「なりたい自分が見えてくる」学びの場を、また多様な問題解決に向け協創する産官学パートナーとは、「成し遂げたい未来に向け共に取組む」創造の場を、涵養したいと考えています。