鳥取大学農学部 Faculty of Agriculture, Tottori University

教員詳細

准教授

原田 和記

Kazuki HARADA

所属
共同獣医学科
講座
臨床獣医学
教育研究分野
獣医内科学
主な担当科目
内科学A、プレクリニカル実習、コミュニケーション演習

研究の概要

伴侶動物の内科疾患に対する新規薬物治療法を探索する

犬や猫といった伴侶動物は、家族の一員として、ご家族には欠かさせない存在となっています。近年の獣医療の発展により数多くの内科疾患の治療法が確立してきておりますが、未だ難治性の疾患が多くまた治療の代償に副作用を伴う場合もしばしばあります。この問題を解決するため、薬剤耐性菌感染症を含めた各種疾患に対して新規の薬物の効果を検証し、実用化に向けた検討を行っております。

伴侶動物に分布する薬剤耐性菌が及ぼす影響

動物で発生した薬剤耐性菌は当然その個体での抗菌薬治療を困難にする可能性がありますが、さらに水平伝播を生じ、同時期に院内にいる個体や家庭内で同居している個体で同様の影響を及ぼす可能性があります。同様に、獣医療従事者や飼い主といったヒトへの水平伝播のリスクも生じうると言われております。さらに、環境へも拡散することで、より広範囲の動物やヒトへの伝播が生じる可能性があります。このように薬剤耐性菌の影響は投与個体に留まることなく、非常に広範囲に影響が生じうるという点が、一般的な医薬品の副作用とは大きく異なる点と言えます。

主な研究テーマ

伴侶動物における薬剤耐性菌の疫学調査

薬剤耐性菌は、抗菌薬に抵抗性を有する細菌の総称であり、本菌が感染することで治療が難航することが知られています。この問題は医療のみならず獣医療においても全く同様であり、近年では伴侶動物における薬剤耐性菌感染症が増加の一途を辿っております。そこで、薬剤耐性菌が伴侶動物にどの程度分布しているか、また分離された薬剤耐性菌にはどのような抗菌薬が効果を有するかについて明らかにするために伴侶動物に由来する薬剤耐性菌の疫学調査を行っております。薬剤耐性菌はヒト、動物の垣根を超えた問題であることから、最終的にOne Healthに向けた取り組みにつながると考えています。

動物病院における犬猫患者から分離された多剤耐性大腸菌のPFGE解析.同一病院における複数患者から、同一または極めて類似した遺伝子性状を有する多剤耐性大腸菌が検出され、動物間で多剤耐性菌の水平伝播が生じていることが示唆される

伴侶動物における抗菌薬の薬物動態学/薬力学解析

細菌感染症を治療する上で抗菌薬の投与は欠かせませんが、投与された抗菌薬がその後どのような運命をたどり、吸収、分布、代謝、排泄されてくか、すなわち薬物動態を知らなければ適切な投与方法や投与量を設定することはできません。特に、伴侶動物における抗菌薬の薬物動態学や薬力学については未だ不明な点が多いです。そこで、伴侶動物におけるこれら抗菌薬の薬物動態学/薬力学パラメータを明らかにすることで、その有効性を最大限に発揮できる投与方法の設計に貢献したいと考えております。これにより、細菌感染症に罹患する伴侶動物の治療選択肢が少しでも増え、最終的には救命できる患者の増数にもつながることを期待しております。

抗菌薬の薬物動態学と薬力学の概要.薬物動態学(PK)と薬力学(PD)には複数のパラメータが存在しており、これらを組み合わせて解析(PK/PD解析)することにより、抗菌薬の最適な用法・用量を検討することができる。

伴侶動物における循環器疾患及び内分泌疾患に対する薬物治療に関する研究

伴侶動物においてもヒトと同様に高齢化が進んでおり、加齢に伴う各種疾患に罹患し、さらにはその疾患と向き合っていく期間が長くなっております。中でも循環器疾患や内分泌疾患はその代表と言えるものであり、いずれも内科的治療が必要な場合が少なくありません。長期間の内科的治療は動物自身のみならずそのご家族にも大きな負担になるため、可能な限り副作用がなくかつ有効性の高い治療が常に求められています。そこで、これら疾患に対する新規薬物又はサプリメントの有効性を患者に対する臨床試験や動物実験により検証しています。これにより、これら疾患に罹患する患者及びそのご家族のQuality of Lifeの向上に貢献できればと考えております。

心臓超音波検査によるドプラ検査.超音波検査により心臓及びその内部の血流の動きを評価することができ、その結果は心疾患の診断のみならず心機能の詳細な評価にも用いることができる。

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