教員詳細
准教授
山下 真路
Masamichi YAMASHITA
- 所属
- 共同獣医学科
- 講座
- 臨床獣医学
- 教育研究分野
- 神経病腫瘍学
- 主な担当科目
- 獣医外科学総論、高度臨床腫瘍学特別講義、総合参加型臨床実習
研究の概要
獣医臨床の問題点を分子生物学から経済学まで用いて解決する
初めまして。山下真路と申します。鳥取大学獣医学科に入学してから鳥取大学一筋でお世話になっています。とはいえ大学院時代の所属は山口大学、その間は札幌医科大学へ国内留学を行い分子的な研究、福岡の小動物病院で一般診療の経験を積んできました。現在の獣医療には基礎的に研究が不足している点もありますが、業界の構造的な問題も存在します。様々な学問を利用して一緒に問題を解決していきましょう。気軽に連絡ください!
附属動物医療センターでの眼科診療の様子
左上が本人です。現在は主に眼科診療に携わっています。すべての症例の写真を保存し、後の臨床研究に利用しています。また、獣医師免許取得前の獣医学生に対する眼科専門医育成にも力を入れています(右下)。
主な研究テーマ
オーバーラッピングペプチドを利用した癌抗原の特定DLAにおけるエピトープ同定
近年、愛玩動物の長寿化により腫瘍性疾患に罹患する動物が増えています。外科的な完全切除ができないほとんどの癌腫肉腫は難治性の腫瘍であり、新規治療法の開発が求められています。新規治療法の一つとして、免疫賦活療法が研究されているが、臨床応用には至っていません。腫瘍抗原を標的としたペプチドワクチンやmRNAワクチンを確立するためには、免疫により、細胞障害性T細胞(CTL)がどの程度活性化されたかを評価する必要があり、そのためにはELISpot assayが用いられます。我々はELISpot assayを用いて、犬の免疫賦活療法の確立を目指し、癌抗原SurvivinのMHCclassⅠに提示されるエピトープの同定を目標としています。
研究ではSurvivinのエピトープ同定を目的としますが、研究法の確立により様々な利用が可能と考えています。ELISpot assayが要の研究です。
獣医眼科臨床研究
日本の獣医療では眼科領域はこれまで一般的ではありませんでした。しかし、近年欧米に追従するように大学病院での眼科専門医や眼科専門病院が増えてきています。人と同じような白内障の手術や緑内障治療、網膜硝子体手術がより一般的になっています。欧米の臨床研究をもとに日本でも眼科診療が行われていますが、各国で犬種猫種割合はかなり異なっており、その国特有に多い疾患が存在(柴犬の原発性緑内障や進行性網膜変性など)することから日本独自での研究が必要です。我々は日常の診療記録を蓄積しており、現在は、「白内障手術の合併症成績」「柴犬の原発性緑内障」「猫のび漫性虹彩メラノーマ」をテーマに研究を行っています。
猫のび漫性虹彩メラノーマの写真。通常は黄緑の虹彩であるが、徐々に茶色の領域がび漫性に増えていく悪性腫瘍です。目の腫瘍の中でも転移率が高く、診断・治療共に問題の多い疾患です。
獣医師の労働生産性の他業種、他国との比較
日本の獣医学や獣医師の仕事は多岐にわたりますが、獣医師の人数は非常に少なく小さい産業です。動物に直接関わる仕事の中で、産業動物(牛、豚、鶏など)の数は横ばいであるものの、伴侶動物である犬の飼育頭数は減少傾向が続いています。近年は伴侶動物獣医師を目指す学生が多いにもかかわらず需要の減少が予想されるこのような傾向であることは、近い将来問題が起きてくると考えられます。すでに長時間労働や女性が働き続けることが難しい状況は発生しており、問題解決が必要です。現在は様々な統計データを海外の情報と比較することにより、どのような問題解決方法があるかを考察しています。