教員詳細
准教授
伊藤 典彦
Norihiko ITO
- 所属
- 附属動物医療センター
- 講座
- 臨床獣医学
- 教育研究分野
- 角膜(薬理学、生理学、解剖学、病理学)、再生医療学、眼科学
- 主な担当科目
- 眼科学各論、眼科学総論、総合参加型臨床実習
研究の概要
動物医療と福祉の増進をはかり動物たちの生活の質の向上を実現する
動物のための医療機器、医薬品、食品、用品等の研究開発を行っている。ひとつには角膜治療のための犬猫用コンタクトレンズを開発し上市した。また、日常の臨床で犬の水泡性角膜症治療方法を発見した。「水泡性角膜症治療用医薬組成物」として特許が成立した。鳥取大学発、世界初の治療薬の開発を目指す。
主な研究テーマ
オキシブプロカイン点眼液のイヌ水疱性角膜症における角膜浮腫改善機序の解明
水泡性角膜症とは角膜が浮腫混濁をおこし視機能に重度の障害を起こす疾患である。本症は角膜内皮細胞のポンプ機能が障害され角膜内の水分量が増加することで発症する。人医療では、角膜移植術や角膜内皮移植術が適応となるが、圧倒的に角膜が不足している。獣医療では、組織・臓器移植の普及はなく点眼療法による治療方法の開発が待望されている。眼科用表面麻酔剤であるオキシブプロカイン点眼液が犬水泡性角膜症の角膜の浮腫混濁を改善する効果を有することを発見した。その効果は既存の治療法を凌駕し、その機序は推定することさえできない。本研究では、待ち望まれている水泡性角膜症の点眼療法を創り出すために最も重要である効果発現の機序を明らかにする。
角膜の浮腫混濁の改善は接触型眼圧計で眼圧測定する際に使用される眼表面麻酔薬であるオキシブプロカイン点眼液の効果であることに気づいた。
猫の慢性腎臓病で有用な診断マーカーの探索
高齢の猫の3頭に1頭は慢性腎臓病を患う。人医療で使用されているマーカーを指標に診断・治療をするが、食欲は途絶し削痩し亡くなってゆく。一方、人の慢性腎臓病では、治療を受けながらでも生活の質を落とすことなく齢を重ねてゆく。この窮状を鑑みて、猫は人と同じマーカーでは救えないことに気づいた。そこで猫の慢性腎臓病の診断に有用な新しいマーカーの探索をする。本研究は二つの研究から構成される。ひとつは標的マーカーの検証と、もうひとつは早期診断も期待できる未知マーカーの探索である。マーカー発見の暁には、より早くに生活習慣の改善や治療を始めることができるようになる。猫たちが生涯にわたり腎臓の機能を守りながら健康寿命を全うするようになる。
眼疾患治療法の改善を目的としたウマ再構築角膜を用いた試験系の確立
現在のウマ臨床では、多種の病原細菌に対して強い抗菌効果をもたらす高濃度の点眼薬が導入され、2時間間隔の頻回点眼が推奨されている。しかし、一部の抗菌点眼薬は角膜毒性を有しており、これらの点眼薬の過剰投与による角膜の上皮化の遅延や透明治癒の阻害が指摘されている。本研究では、ウマ由来細胞を用いたウマ角膜上皮シートの作製とそれを用いた各種点眼薬のウマ角膜に対する毒性や効果を検証する。また、角膜の適切な修復を示唆する透明治癒の検証も併せて評価できる新規モデルとしてウマ再構築角膜(角膜上皮と実質部分の2層構造)の作製に挑み、治療効果の改善につながる点眼療法を検討するためのウマ再構築角膜を用いた試験系の確立に取り組む。