教員詳細
助教
奈良井 絵美
Emi NARAI
- 所属
- 共同獣医学科
- 講座
- 基礎獣医学
- 教育研究分野
- 獣医生理学
- 主な担当科目
- 生理学実習
研究の概要
運動時に自律神経活動を適切に制御する脳メカニズムを解明する
運動時には、血圧や心拍数などの循環動態が大きく変化します。それらは自律神経によって調節されています。そして自律神経の活動を司るのは脳です。私たちは、ラットを用いた実験により、脳内のどのような神経回路がどのようなメカニズムで運動時の自律神経活動を制御しているのかを調べています。そのメカニズム解明は、動物およびヒトにおいて、運動時に自律神経活動異常をきたす疾患の原因究明や治療法開発に貢献すると考えています。

運動時の交感神経制御機構
運動時には交感神経が活性化することにより生体の恒常性が保たれます。その交感神経活動を制御する脳メカニズムには未解明な点が多く残されています。
主な研究テーマ
歩行時の身体運動および循環調節におけるオレキシン産生神経の役割
視床下部脳弓周囲野に局在するオレキシン産生神経は、睡眠―覚醒やエネルギー代謝の調節に重要な役割を持つことが知られています。私たちは、このオレキシン産生神経が運動時に興奮して、歩行運動と同時に血圧と心拍数の上昇を引き起こすことを明らかにしました。現在は、このオレキシン産生神経がどのような脳内回路を経て交感神経を興奮させるかを調べています。これらの研究では、光遺伝学による神経活動操作、交感神経活動および循環動態の計測、行動観察などの手法を組み合わせています。

覚醒ラットのオレキシン産生神経を光遺伝学的に活性化すると、歩行と同時に血圧と心拍数が上昇する。(E. Narai et al, J Physiol, 2024より引用,一部改変)
運動時の適切な循環調節のための交感神経抑制性脳メカニズムの解明
これまでの研究により、運動時に興奮する脳領域を刺激すると、交感神経の活性化だけでなく、活動抑制が起こることがわかりました。そこで、運動時には交感神経を活性化する神経だけでなく、交感神経を抑制する神経も重要な役割を果たしており、その結果、交感神経が「適切」に調節されると仮説を立て、検証に取り組んでいます。運動時に交感神経活動を抑制するメカニズムが明らかになれば、運動時に交感神経過剰活性を呈する心血管疾患の病態発生の原因解明と治療法開発に繋がる可能性があります。

視床下部脳弓周囲野の非オレキシン神経を光遺伝学的に活性化した際の交感神経活動変化。運動時に活性化されるこの領域には、交感神経活動を抑制する神経も含まれることを示しています。(Narai & Koba, Neurosci Lett, 2024より引用, 一部改変)