鳥取大学農学部 Faculty of Agriculture, Tottori University

教員詳細

准教授

井口 愛子

Aiko IGUCHI

所属
共同獣医学科
講座
臨床獣医学
教育研究分野
獣医臨床検査学、獣医内科学
主な担当科目
獣医内科学、プレクリニカル実習、総合参加型臨床実習

研究の概要

犬猫に対し、データに基づいた安心安全な処置・治療を行う

犬バベシア症は犬に貧血や黄疸を引き起こし無治療の場合、死に至ることもある感染症です。治療には様々な方法が検討されていますが、安全かつ完全に駆虫できる方法は未だ見つかっていません。既存の治療薬のより有用な活用方法や新しい治療薬の検討を行っています。その他、附属動物医療センターにおいて犬猫の貧血に対する診断・治療を目的に活動しています。

犬の赤血球内に寄生するバベシア原虫

丸く紫のリング状に見えるものが顕微鏡で観察したバベシア原虫です。これが増殖し、赤血球を壊すことで犬に貧血を引き起こします。

主な研究テーマ

バベシア原虫に対する薬剤の作用機序の解明

犬バベシア症の治療に対して、多くの薬剤の使用が検討されています。しかしそれらは慣習的に使用されているものが多く、薬剤の標的部位や増殖抑制メカニズムが解明されているものはほとんどありません。獣医療においても証拠に基づく治療法(EBM)の確立が求められています。そのため、培養株を用いて既存の治療薬の標的部位ならびにその作用機序の解明を目的に研究を進めております。

培養株は写真中央のプレート内で管理を行います。各well(穴)に対して異なる濃度が含まれた培養液(写真左側のチューブ)を加え、原虫が増殖するかどうかを評価します。

犬バベシア症に対する新規治療薬の探索

現在、犬バベシア症に対して用いられている薬剤は、使用時の疼痛や使用後の再発など様々な問題を抱えています。それらを克服するために新しい治療薬の探索を行っております。まずは培養株を用いてその薬剤がバベシア原虫の増殖を抑制するかを確認し、より良い使用法を求めて既存の薬剤との併用による効果を評価します。安全性が確認できた場合には、近隣の動物病院さまと連携し、治療効果の判定を行います。

培養株を用いた実験結果です。2つの薬剤(薬剤①と薬剤②)を同時に暴露させた後に、グループAでは何も加えていない培養液で培養を続けます。グループBでは新規薬剤②のみを継続して使います。その結果、再度感染率が上昇するタイミングがグループBの方が遅く、薬剤②の継続使用が再発予防に効果がある可能性が示唆されました。

犬猫の貧血に対する診断・治療の精度向上

犬や猫は様々な理由で貧血を呈します。原因が感染症のこともあれば、腫瘍や自己免疫疾患のことなどがあります。多くの研究者が診断精度を上げるために情報を発信しておりますが、その情報をうまく活用することも重要です。数値だけでなく血球の形態や染色性からの判断技術の向上を目指しています。また、貧血の治療中には輸血を必要とする場面もあります。安心安全に輸血ができるように輸血制度の向上を目的に研究を進めております。

貧血の犬の血液の標本です。赤いものが赤血球ですがよく見ると、やや紫がかった色をしているものや端の部分が白く抜けているものがあります。これらによって何が原因で貧血が起こっているのかヒントを得ることが出来ます。

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