鳥取大学農学部 Faculty of Agriculture, Tottori University

教員詳細

准教授

藪田 行哲

Yukinori YABUTA

所属
生命環境農学科
担当教育コース
農芸化学
教育研究分野
栄養科学
主な担当科目
基礎生化学,栄養科学
研究に関連する高校教科

研究の概要

線虫を用いたビタミンの機能解析と食品の機能性評価

日本では古典的なビタミン欠乏症はほとんど見られません。しかし、日常的な身体の不調を訴える人の中には潜在的なビタミン欠乏症に陥っている人は少なくありません。一方でこれまで知られていなかったビタミンの新機能性についての報告が相次いでいます。これらについての分子機能を明らかにするために我々はモデル生物である線虫を使って研究を行っています。また食品の機能性の評価についても行っています。

線虫をビタミン研究に用いる利点

これまでに線虫はヒトの疾病発症に関わるメカニズムの解明に役立ってきました。またその過程で様々な疾病モデル線虫が作られてきました。最近では線虫を使って様々な栄養素の機能について調べられています。線虫使って研究する利点は寿命が短い、倫理的配慮が必要ない、観察し易い、安価に培養できるなど様々な利点があります。そこで線虫を使って研究することで新たなビタミンの機能や欠乏症のメカニズムが明らかになると思われます。

主な研究テーマ

ビタミンC不足線虫の特徴についての研究

ビタミンCはコラーゲンやホルモン合成に必須のビタミンであり、抗酸化物質としても機能します。ビタミンCの不足は肌荒れや疲労などの軽度なものから筋力低下や老化の加速など深刻な障害を引き起こします。ところで線虫もまたビタミンCを生合成し、それを使っている事がこれまでの実験で明らかになっています。このことはヒトと同じ機構でビタミンCを使っている事が考えられます。そこで線虫を使ってビタミンC不足による障害発生のメカニズムを調べています。

ビタミンC不足線虫を作るためにまず、線虫のビタミンC生合成経路を調べたところ哺乳動物と同様に炭素骨格の再構成が起こる経路である事が明らかになりました。この結果をもとに遺伝子発現抑制によりビタミンC不足線虫を作成し、その特性を調べています。

アルツハイマー病モデル線虫を用いたビタミンB12不足の影響

アルツハイマー型認知症は認知症の中で最も多い疾病であり、患者だけでなく介護者のQOLを著しく低下させることから有効な予防・治療法の開発が求められています。このメカニズムを調べるためにアルツハイマー病モデル線虫が作成されています。ところで血中のホモシステインレベルが高いとアルツハイマー病に罹患するリスクが高まります。しかしその理由はよく分かっていません。ホモシステインレベルの上昇はビタミンB12不足により起こります。そこでこの疾病モデル線虫を用いてビタミンB12不足の影響について調べています。

アルツハイマー病モデル線虫は病状の進行に伴い麻痺します。この線虫をビタミンB12が十分にある条件と不足条件で培養したところ、不足条件の方が早く麻痺しました。また安定型ビタミンCで処理したところ回復が認められました。興味深い事にアルツハイマー病発症の原因と考えられているアミロイドβの凝集に大きな違いは認められ無かったことから活性酸素種がアミロイドβの毒性を増大させている事が考えられました。現在これに関わる詳細なメカニズムについて調べています。

食品に由来する虫歯予防物質の探索

虫歯はストレプトコッカス ミュータンスが作り出す粘着性のグルカンが歯に付着し、様々な微生物と共生し酸を作ることで歯が侵される事により発生します。従って原因菌であるストレプトコッカス ミュータンスのグルカン生成の阻害が虫歯の予防に繋がると考えられています。そこでストレプトコッカス ミュータンスのグルカン生成や乳酸生成を抑制する物質を食品より探索して虫歯の予防に役立てたいと考えています。

様々なハーブティーのストレプトコッカス ミュータンスのグルカン合成酵素阻害活性を調べたところ、レモンマートルと呼ばれるハーブティーが最も高い阻害活性を示しました。

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