教員詳細
准教授
美藤 友博
Tomohiro BITO
研究の概要
栄養素を含む食品成分からヒトに有効な新しい機能を発見する
2015年の「機能性表示食品」制度の開始より、国民の食と健康に対する関心がこれまで以上に高まる一方、機能性成分への正しい理解が求められています。地域資源や未利用資源から健康維持・増進に役立つ機能性成分を探索・特定し、その機能性成分が生体内でどのような作用を及ぼすのかを解明することを目指します。得られた研究結果は、医療への展開やサプリメント開発への応用を通じて、ヒトの健康寿命の延伸に貢献することが期待されます。
食品機能学の特徴
食品機能学研究室では食品の3つの機能の内、特に栄養性にあたるビタミンの機能解析と機能性成分の生体調節機能に着目し、培養細胞やモデル生物を用いて研究を推進しています。
主な研究テーマ
美白作用を示す食品由来成分の探索・作用メカニズムの解析
『美白』は古くから現代に至るまで人類の大きな関心の対象であり,これまでに数多くの美白作用を示す化合物の探索や開発が行われてきました。シミやソバカス,皮膚がんの原因であるメラニンの生成には、チロシナーゼという酵素の働きが関与しています。すなわち、このチロシナーゼの機能を阻害する化合物はメラニンの生成を抑制し美白作用を示します。近年のナチュラル志向の高まりにより,化粧品分野では天然素材由来の安心・安全なチロシナーゼ阻害物質の探索の需要が高まっています。地域の特産品や未利用資源などからチロシナーゼの阻害機能を示す成分を探索し,その作用メカニズムを機器分析や培養細胞実験を通じて解析しています。
(左上)培養細胞の観察、(右上)培養細胞実験の様子、(左下)機能性成分を分析機器で解析している様子、(右下)鳥取県の特産品である二十世紀梨から見出した美白作用を示す機能性成分の化学構造
ビタミンB12欠乏症の発症メカニズムの解明
中高齢者に不足しがちな栄養素の1つとしてビタミンB12が挙げられます。ビタミンB12が不足し欠乏症を呈すると神経障害や認知機能障害を発症し、ヒトの健康寿命を著しく低下させます。しかし、なぜこれらのような症状が現れるのか詳しいメカニズムは解明されていません。線虫C. elegansは体長1 mm程度の小さな線形動物ですが、その生育にはヒトと同様にビタミンB12を要求することが明らかになりました。すなわち、線虫もビタミンB12欠乏症を発症します。このビタミンB12欠乏モデルを利用し、ビタミンB12欠乏症の詳細な発症メカニズムを解析すると共に、ビタミンB12の新機能を探索しています。現在は、特にビタミンB12と中性脂質代謝ならびに筋機能との関連性に着目している。
(上段)線虫Caenorhabditis elegans、(中段左)通常生育線虫における中性脂質蓄積の様子、(中段右)ビタミンB12欠乏線虫における中性脂質蓄積の様子:通常生育と比べ中性脂質を貯蓄する脂肪滴が肥大化(=中性脂質が増加)している、(下段左)通常生育線虫における筋繊維の様子、(下段右)ビタミンB12欠乏線虫における筋繊維の様子:通常生育と比べ筋繊維が歪んでいる(加齢性筋委縮症との関連性は?)
ビタミンB12を強化した農産物の開発
ビタミンB12は唯一の動物性ビタミンと言われ、生鮮野菜をはじめとする植物由来の食品にはほとんど含まれていません。従って、厳格な菜食主義者もビタミンB12欠乏症発症のハイリスク群に該当します。近年、植物工場で利用されている水耕栽培技術を利用することで、ビタミンB12を生鮮野菜に導入できることが明らかになりました。また、ビタミンB12を強化した野菜では、種々の栄養素のみならず機能性成分レベルの向上も認められました。そこで、本技術を利用し機能性生鮮野菜の開発を目指し、研究を推進しています。