教員詳細
准教授
木戸 一孝
Kazutaka KIDO
研究の概要
野菜・花の種子伝染病を制御し、持続可能な栽培管理に貢献する
植物病は植物病原体(ウイルス,細菌,糸状菌)が伝染することで発生します.その第一伝染源の一つとして,種子伝染が挙げられます.野菜・花の種子は世界中を流通しており,植物病原体に汚染した種子により世界の様々な場所で同時多発的に病気が発生する危険性を孕んでいます.そのため,植物病原体の種子伝染メカニズムを解明し,「防除対策」や「種子の健全性評価法」を開発することで,持続的農業の発展への貢献を目指します.
種子伝染に由来した植物病の発生事例
種子伝染に由来した植物病の発生事例の一つとして,「アブラナ科黒斑細菌病」を紹介します.アブラナ科黒斑細菌病は汚染種子が第一伝染源となり病気が発生します.発病した植物組織では植物病原細菌が多量に増殖し、雨風によって病原細菌が近隣の健全な株に伝染し被害が拡大します.収穫間際のダイコンで病気の発生が顕著となった場合,葉に病徴が現れるだけでなく,可食部位である根の内部にも腐敗症状を伴い場合があります.
主な研究テーマ
「アブラナ科黒腐病菌」及び「アブラナ科斑点細菌病菌」による種子伝染メカニズムの解明
アブラナ科植物の種子伝染性細菌には「アブラナ科黒腐病菌」,「アブラナ科斑点細菌病菌」などがあります.これらの植物病原細菌による被害は日本のみならず,世界中で確認されています.その原因の一つとして,これらの細菌に種子汚染が原因と考えられています.しかしながら,これらの植物病原細菌による種子汚染のメカニズムや汚染種子に起因する発病メカニズムの詳細は不明な点が多い状態です.そこで,これらの植物病原細菌が種子に侵入する経路、種子内部における病原細菌の生息状況,汚染種子に起因する発病の実態,発病後の伝染リスク評価について研究を行うことで,種子伝染性細菌病による被害の発生を防ぐことを目指します.
アブラナ科斑点細菌病菌(Xanthomonas campestris pv. raphani)に汚染した種子に起因した病気の発生.発芽したばかりのダイコン幼苗の本葉に激しい斑点症状が観察されます。このような苗が第一伝染源となり,病気の発生が助長されます.
Cucumber green mottle mosaic virus (CGMMV)による種子伝染メカニズムの解明
近年,CGMMVによるウリ科植物での果実の奇形や品質劣化といった被害がアメリカ,カナダ,オーストラリア,ポーランドなどにおいて発生しています。その第一伝染源はCGMMV汚染種子によると推測されている状況です.しかし,植物ウイルスに有効な農薬はないため,CGMMVによる被害を防ぐには健全種子を用いることが病害防除の第一歩となります.そこで,ウリ科種子におけるウイルス局在部位の特定や汚染種子から発芽した苗におけるウイルスの感染・増殖・発病の実態を調査することでCGMMVによる種子伝染メカニズムの解明を目指して研究を行っています.その研究成果が健全種子供給システムに向けた新たな防除手段を開発する糸口となることを願っています.