鳥取大学農学部 Faculty of Agriculture, Tottori University

教員詳細

教授

山田 智

Satoshi YAMADA

所属
生命環境農学科
担当教育コース
国際乾燥地農学
教育研究分野
植物栄養学
主な担当科目
植物栄養学I,植物栄養学II,国際乾燥地農学実験II
研究に関連する高校教科

研究の概要

塩からい水を使って、魚と野菜をそだてる

世界の乾燥地において、水資源は減少しており、またその地下水は塩分濃度が高いことが多いため、農業に不向きな場合が多いです。この使いにくい塩分を含んだ水を用いた、環境にやさしい食料生産法を目指すために、新しい養殖-農業結合システム(アクアポニックス)を作り上げます。これにより、魚(タンパク源)と作物(ビタミン源)の同時生産、塩分を特に吸収する作物による塩分の除去を実現します。

アクアポニックス試験の様子

塩分を含んだ地下水を模して作製した地下水を用いて、アクアポニックス試験を行っています。養殖して大きく成長した魚(ティラピア)とその養殖廃液を用いて野菜(フダンソウ)を水耕栽培しています(於 鳥取大学農学部)。

主な研究テーマ

乾燥地に適応した露地栽培結合型アクアポニックスの開発

塩分を含む地下水を水産物養殖に用いた後に、作物の水耕栽培に用います。水耕栽培では、塩分を吸収することにより成長することができる好塩性作物を栽培します。水耕栽培により低塩化された水を最後に露地栽培に用います。そのために露地土壌の塩類化を軽減するとともに、露地栽培作物の塩害を緩和することができます。システム稼働に必要となる電力は太陽光発電により賄います。

露地栽培結合型アクアポニックスの概要

塩集積性作物のスクリーニング

アクアポニックスにおける水耕栽培では、塩分をできるだけ多く吸収する作物を用います。これにより塩分を含む養殖廃液から塩分を除去することができます。これらは、塩生植物とよばれ、塩性環境でも生育を全う(発芽→成長→次世代の形成)することができます。一般的な作物は中生植物とよばれ、塩性環境では、吸水が阻害されたり、また体内に吸収した塩分により代謝が乱されてしまいます。塩集積性作物が、どのような仕組みにより高い塩性環境下でも成育することができるのかについて調べています。

高い塩分を含ませた培養液で各種の塩集積性作物を水耕栽培している様子。塩分を含まない場合(対照区)と比べて、高い塩分を含む場合(塩処理区;海水の約10分の1の塩分を含む)でも、生育がわずかに減少する作物と、むしろ増加する作物が存在することがわかります。

海水を用いた作物の水耕栽培は可能か?

地球上に存在する水の97.5パーセントは、海水です。淡水の減少や塩性化が進行することを考えると、塩分を多量に含むが(約3.5パーセント)、豊富に存在する海水を農業に利用することができれば、淡水の保全につながります。塩生植物の中でも、最も耐塩性の強い植物を偏性塩生植物とよびます。この植物群は、海水でも生育することが可能であり、また海水の約3分の1〜2分の1の塩分濃度で最大の生育を示すといわれています。2分の1に希釈した海水に対して養分添加やpH調整などの処理を施したものを培養液として、食用となる偏性塩生作物を水耕栽培し、その生長応答を調べています。

海水を用いて偏性塩生作物を水耕栽培している様子。偏性塩生作物であるスアエダ・エデュリスとシー・アスパラガスに加えて、耐塩性作物であるアイス・プラントも無処理区(2分の1に希釈した海水)でも生育ができることがわかります。T1は中生植物用の標準培養液、T3は海水のアルカリ性を弱酸性に矯正した区、T4はpH矯正に加えて海水では不足する養分をT1のそれらに合わせるように添加した区を示します。

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