鳥由来感染症グローバルヘルス研究センターでは、前身である農学部附属鳥由来人獣共通感染症疫学研究センターで培った高病原性鳥インフルエンザウイルス(HPAIV)や家禽が保有する抗菌薬耐性菌の制御に関する実践的研究を基礎に、これらをさらに拡大・推進・発展させるため、1.鳥由来感染症の制御、2.抗菌薬耐性菌の制御および3.人材育成から成る3つのプロジェクトに取り組んでいます。特に近年、地球規模で拡大し、哺乳動物での感染も多数発生しているHPAIVについては、動物衛生や生物多様性への影響に加え、新たなパンデミックの原因として危惧されるなど、社会的な関心も高いことから喫緊の課題として取り組んでいます。
1. 鳥由来感染症の制御
革新的疾病制御技術の開発と
社会実装
高病原性鳥インフルエンザ(HPAI)制御のため、国内の野鳥および家禽分離株の分子疫学的解析や病原性評価などウイルス性状の解析に加え、ウイルスと共に海外から渡来する野鳥や農場周辺に棲息する野生動物の生態解明を進め、地球規模のウイルス動態および農場へのウイルス侵入経路の解明を行う。また、新たなワクチン開発や抗病性家禽の開発など、革新的疾病制御技術の開発と社会実装を目指す。この他、海外から国内への多様な病原体侵入リスク解明のため、渡り鳥の病原微生物保有状況、海外の野鳥や家禽を対象にした鳥由来感染症の探索とその性状解析を推進する。
2. 抗菌薬耐性菌の制御
人への健康リスク回避の
新技術開発
家禽が保有する抗菌薬耐性菌の制御や野鳥による耐性菌の分布域拡大制御のため、国内外で家禽および野鳥を対象に抗菌薬耐性菌保有状況および耐性関連遺伝子の分布状況を明らかにし、鳥類全般における耐性菌保有状況の実態や地球規模の動態、さらには国内への侵入リスクを解明する。また、家禽が保有する耐性菌の薬剤に依存しない飼養衛生管理技術の開発およびバクテリオファージ由来溶菌因子やアンチセンスRNAの応用による革新的耐性菌制御技術を確立する。
3. 人材育成
獣医師および鳥類疾病の
専門家育成
本センターの研究活動により得られた成果は、学部および大学院での専門教育、さらには家畜衛生や展示動物の衛生管理、鳥類の研究に従事する研究者や獣医師等を対象に講習会等を通し還元し、社会が必要とする人材育成に資する。また、病原微生物高度封じ込め実験室を活用した学部、大学院、海外からの研修生、獣医師等のリカレント教育、実習用教材の作成を行う。海外での研究により得られた成果は速やかに現地の研究者や獣医師等に還元し、現地での人材育成や技術協力・支援に資する。