農学研究科大学院課程教育(修士課程)に関する三つの基本方針
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農学研究科は,食料,生命,環境,乾燥地,エネルギーなどに関する深い学識を教授し,それぞれの専攻分野の幅広い高度な教育研究を行うとともに,広い視野に立ち人類の生存に関わる諸問題を解決できる高度専門職業人,または研究者を養成することを目的としている。この目的を達成するために,修士課程における「学位授与の方針」,「教育課程編成・実施の方針」,「入学者受入れの方針」を以下のように定める。
ディプロマ・ポリシー(学位授与の方針)
農学研究科は,学生が農学研究科における学修と経験を通じて次のことを修得したときに,修士の学位を授与する。
1.所定の期間在学し,所定の単位を修得し,修士論文または特定の課題についての研究の成果の審査及び試験に合格すること。
2.以下の各専攻において研究能力または高度な専門性を必要とする職業を担うための優れた能力を身につけること。
【フィールド生産科学専攻】
実際の農業生産のフィールドと水土緑など農業生産を取り巻くフィールド,人間社会というフィールドという三つのフィールドのいずれかにおいて,自然生態系や社会環境条件と人間の営みとの関係について学び,食料の生産,生存基盤の開発・保全・修復,または,経済的・経営的分析に関する高度な知識や技術のいずれかを修得した者。
【生命資源科学専攻】
動物・植物・菌類等の多様な遺伝資源を用いて,生命機能を分子レベル・遺伝子レベルで解明し,生命機能の活用を学ぶ。そして,対象生物に関する分類・生態学的特性の把握,細胞工学・染色体工学・遺伝子工学等の生物改変技術,食品の栄養と機能の評価,または,食品としての動植物の効率的生産に関する技術のいずれかを修得した者。
【国際乾燥地科学専攻】
世界の乾燥地の気候や水資源,乾燥地に生きる生物の特徴や生態系,灌漑や土壌,植物栄養など乾燥地での農業生産環境,乾燥地に特徴的な植物栽培と作物の遺伝生理,さらに住民の暮らしと知恵を体系的に学習し,乾燥地が抱える複雑な問題を理解し,その解決能力をもち,国際的な場でも活躍できる技術を修得した者。
カリキュラム・ポリシー(教育課程編成・実施の方針)
農学研究科は,学部教育で学んだ基礎知識をもとに,以下に示す体系化した科目を学ぶことでより専門な知識を修得させ,高い倫理観と国際的感覚を身につけて,「問題解決能力」と「課題発見能力」を向上させる。
授業は,一部,実習演習を含む講義2単位(1単位15時間),演習2単位(1単位30時間)を基本とし,共通科目,実践科目,基幹科目,展開科目および演習科目によって構成する。
共通科目は,社会で通用する人材を育成するための基礎的科目であり,実践科目では,科学技術と社会との関係や社会への安全に関して高い素養を身につける。基幹科目では,入門科目として,各専攻の学問領域を平易に解説し,学生自身の学問的興味を掘り起こさせ,展開科目は,専門知識をより発展させるとともに,関連領域について関心を高め,幅広い視野を身につける。演習科目では,最終的に体系的な学位論文の作成に向けて,自立した研究者や技術者として必要な能力を高める。
【フィールド生産科学専攻】
基幹科目と展開科目で,生産,育種,圃場管理に関する理論と技術,生態学と環境学の基本理念と技術,人間と自然環境との持続的共生関係を構築する技術及び食料の生産・流通・消費に関わる経済・社会活動を対象とした社会科学の理論と手法を学び,専門知識を深化させるとともに,関連領域への幅広い視野を身につける。さらに,演習科目で「問題解決能力」と「課題発見能力」を向上させ,研究指導により,体系的な研究遂行に関する理論と実践を学び,修士論文を作成する。
【生命資源科学専攻】
基幹科目では,動物・植物・菌類等の多様性と遺伝資源の重要性に対する理解を深め多様な生命現象の解明と生物資源の有効利用に関する高度な知識と技術を学ぶ。展開科目では,関連領域についてより専門的な知識と技術を修得し,演習科目で体系的な研究遂行に必要な思考力と実践力を養い,修士論文を作成する。
【国際乾燥地科学専攻】
基幹科目では,乾燥地の気候や生態系等の自然環境及び乾燥地での農業生産等の人間活動について学び,乾燥地で生じている自然と人の現状及び課題を共有する。これを基盤とし,展開科目ではより専門的な知識を修得し,演習科目で専門分野の技術と思考力を高め,修士論文で課題解決法を総括する。
アドミッション・ポリシー(入学者受入れの方針)
農学研究科は,鳥取大学の教育研究の理念である「知と実践の融合」に基づき,鳥取大学大学院課程教育(修士課程)のアドミッション・ポリシーに定める(1)専門分野において自ら課題を発見して解決するために必要な基礎学力を備えている人,(2)研究に対して積極的に取り組む意欲をもっている人,(3)高度な専門性を必要とする職業を担おうとする人の中から,以下の様な意識と意欲を持った人を求めている。
1.食料の生産・流通・消費に関わる諸問題と自然環境の保全・修復技術に関心があり,地域や国際社会に貢献したいという強い意欲のある人。
2.生命機能の解明と動物・植物・菌類等の多様な遺伝資源の活用に関心があり,先端的研究分野に挑戦する強い目的意識を持っている人。
3.世界の乾燥地が直面する砂漠化などに関心があり,国際的に活躍したいという強い意欲を持った人。
4.人類の生存に関わる諸問題に関心があり,その解決のために幅広い知識と視野を習得しようという意欲を持った人。
【フィールド生産科学専攻】
森林,草地,農地及び湖沼・河川など様々なフィールドにおける自然生態系や社会環境条件と人間活動との関係について解明し,その知識をもとに,食料の生産環境を取り巻く自然環境の保全・再生・修復に取り組みたいという強い意欲を有する人,食料の生産・流通・消費に関わる諸問題の解決を将来的に目指したいという明確な意志を持った人を求めている。
【生命資源科学専攻】
生命機能を分子レベル・遺伝子レベルで解明し,また動物・植物・菌類等の多様な遺伝資源の活用により,人類が直面している食料・健康の問題,地球が抱える砂漠化・環境問題等の解決を目指したいという強い目的意識を持っている人を求めている。
【国際乾燥地科学専攻】
地球規模で生じている自然及び人類的課題に関心を持ち,幅広い視野と専門分野の技術・知識を生かして,自ら課題解決のために行動を起こしたいという,強い意志を持った人を求めている。
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