Concrete for a Sustainable Agriculture
持続的農業のためのコンクリート

現在進行中の研究テーマ
研究テーマ 研究内容
水利コンクリート構造物のひび割れに関する研究  農業用水を取水,貯水,分水,送水するための水利コンクリート構造物には,供用中に様々な変状が生じ,その多くはひび割れという形態で表面的に確認することができます。ひび割れを正確に診断することができれば,的確な補修・補強対策を行うことができるだけでなく,同様な構造形式・環境条件で建造される他の構造物に変状が起こらないための参考資料にもすることができます。そのためには,ひび割れが発生するメカニズムを把握しておかなければなりません。
 本研究では,水利コンクリート構造物に特徴的なひび割れの発生メカニズムを実験的,解析的に明らかにするとともに,ひび割れの発生予測および診断方法についての研究を行っています。研究対象にしている水利コンクリート構造物は,RC開水路,水路トンネル,擁壁式ファームポンド,PCタンク,重力式コンクリートダム,RCボックスカルバートであります。

Key Words:水利コンクリート構造物,ひび割れ,有限要素法

   

積雪寒冷地における水利施設の凍害発生メカニズムおよび凍害診断・対策工法に関する研究  寒冷地では,凍結融解の繰返し作用で水利施設が劣化する現象(凍害)が発生します。寒冷地の水利施設の機能保全を図るためには,開水路や頭首工などの水利施設の構造形式や供用環境に応じた凍害発生メカニズムを明らかにした上で,凍害診断手法(目視観察,凍害劣化深さの測定方法など),対策工法を確立する必要があります。
 本研究では,壁状構造体である開水路側壁を中心に,凍害劣化範囲や深さを診断する手法,凍害発生メカニズムに応じた対策工法について研究を実施しています。また,北海道や青森をフィールドにした現地調査・試験を実施しています。

Key Words:水利施設,積雪寒冷地,凍害,機能診断,非破壊試験,補修・補強

   

土砂系舗装のほ場内農道の機能評価・保全に関する研究  農業生産活動,農産物流通,農村地域の社会生活活動に必要不可欠な農道には,基幹的農道,ほ場内農道があり,ほ場内農道は幹線農道,支線農道,耕作道に分類されます。この中でほ場内農道の舗装率は低く,走行性や快適性および農産物輸送時の荷傷み防止等の機能が確保されていない農道が多くあります。これらの農道の多くは土砂系舗装であり,土砂系舗装の農道に関しても,アスファルトやコンクリート舗装と同様に,利用者に安全・安心な交通を提供するための維持管理体系を構築する必要があります。
 本研究では,土砂系舗装のほ場内農道に必要な性能の解明,わだちや不陸の改善,雑草の繁茂抑制,圃場整備に応じた農道の簡易施工・再配置,農道通行の安全・安心の確保について研究を実施しています。

Key Words:農業用道路,ほ場内農道,土砂系舗装,性能規定化,機能評価,機能保全

  
積雪寒冷地における道路植樹帯の機能保全に関する研究  道路の環境施設帯の構成要素である植樹帯は,車道と沿道を分離してそれぞれの利用者に安全かつ快適な交通を提供する空間であるとともに,植栽される街路樹が有する機能(景観向上機能,生活環境保全機能など)を沿道に提供する空間でもあります。植樹帯が有する機能を発揮するためには,地域環境を考慮した上で街路樹の維持管理作業を的確に行う必要がありますが,積雪寒冷地においては,冬期の堆雪や道路維持作業で行われる車道除雪により特に低木街路樹において損傷が生じることがあり,これによる枯れの発生,引いては裸地化が起こり,植樹帯が本来の機能を発揮できていないところがあります。
 本研究では,冬期環境が低木街路樹に及ぼす影響を考慮した上で維持管理作業を行うためのスキームを確立することを目的として,積雪寒冷地における低木街路樹の動態調査および管理指標について研究を実施しています。

Key Words:積雪寒冷地,道路植樹帯,低木街路樹,堆雪・除雪損傷,管理指標

  
環境配慮型の農業水利施設における性能管理に関する研究  土地改良法の改正(平成13年6月)により,全ての農業農村整備事業は,環境との調和に配慮して行うことが基本原則となりました。この環境に配慮した農業農村整備事業では,事業の対象となる農業施設において施設機能(水利用機能,水理機能,構造機能)と環境機能(景観,生態,親水)という二つの機能が継続的に発揮されることが求められます。農業施設は,この二つの機能が両立して発揮されなければなりませんが,両者は相反する項目も内在するために,両立させることは困難である場合もあります。特に施設機能と環境機能を継続的に発揮させるために不可欠な維持管理は,この点を踏まえて取り組まなければなりません。
 本研究では,環境に配慮して施工された農業水利施設の維持管理の現状を調査することで,施設機能と環境機能の両機能を継続して発揮するための維持管理の方策について検討を行っています。

Key Words:農業水利施設,施設機能,環境機能,維持管理

  

 

過去に実施した研究テーマ
研究テーマ 研究内容
農業用水路トンネルの機能保全対策に関する研究  主としてダム,頭首工などの水源施設から山岳部を貫通して幹線用水路に導水するための施設である農業用水路トンネルは,農業用水を安定的に供給するための生命線施設であり,その国内総延長は2,025km(基幹的農業用水路(約4万km:地球一周分)の約5%)にも及びます。この農業用水路トンネルには,トンネルおよび土地利用者の安全に係わる変状(ひび割れ,摩耗,変形,盛土の空洞など)が多数発生しており,これらの問題の解決が喫緊の課題となっています。
 本研究では,農業用水路トンネルにおける変状の発生メカニズムの解明,発生メカニズムを踏まえた合理的な農業用水路トンネルの補修・補強工法の開発について研究を実施しています。

Key Words:水路トンネル,覆工コンクリート,機能保全

  
土構造物における雑草木の繁茂制御に関する研究  土構造物であるため池堤体には,飛来種子が根付くことで雑草が繁茂するだけでなく,ため池周囲の雑草木の地下茎が浸入し繁茂している状況がよく見られます。雑草木の繁茂は,堤体における漏水の確認,クラックおよび変形の確認,取水施設や洪水吐の管理作業などを困難にさせることから,ため池の維持管理作業の一つとして雑草木の除去が多大な労力を伴って施設管理者により行われています。また,表面遮水壁型工法においては,遮水シートに生じた損傷箇所に飛来種子が根付き成長,あるいは雑草木の地下茎が侵入し成長することで,損傷箇所を拡大させることもあります。
 本研究では,ため池の機能に影響を及ぼすだけでなく,機能を保全するための維持管理にも影響を及ぼす雑草木の繁茂を制御するための工法について研究を実施しています。

Key Words:ため池,雑草木,機能保全,維持管理

  
  • P. Cleopatra, H. Ogata, K. Hattori and A.M. Anwar:Effectiveness of ECC in curtailing re-emergence of weeds on an earth embankment surface, Construction & Building Materials, Vol. 24(4), pp.545-561 (2010)
  • P. Cleopatra, H. Ogata, K. Hattori and T. Teckshawer:Interaction between Engineered Cementitious Composites (ECC) lining and foundation subsurface drain, Advances in Civil Engineering, Volume 2011, Article ID 280717, 9 pages doi:10.1155/2011/280717 (2011)
  • P. Cleopatra, H. Ogata, K. Hattori and T. Ichiyanagi:Effect of D-galacturonic Acid on Hydration of Cementitious Materials, ASCE's Journal of Materials in Civil Engineering, Vol.23(12), pp.1596-1601, doi:10.1061/(ASCE) MT.1943-5533.0000327 (2011)
超音波法によるコンクリートのひび割れ深さ推定方法に関する研究  超音波は,20kHz以上の周波数の音波のことであります。この超音波を用いたコンクリートのひび割れ深さ推定方法には,Tc-To法(L-L方式),デルタ方式,近距離迂回波方式,T法,BS方式,回折波方式(ランプ法),S-S方式,R-S方式,レスリー法,低周波横波超音波法があり,また,超音波の測定機器も,数多くの種類があります。
 ひび割れ深さを正確に推定することは,貯水・送水施設である水利コンクリート構造物の水密性を検討するために必要であります。また,ひび割れが発生した水利コンクリート構造物の補修や補強対策を策定する上でも重要になります。しかし,各推定方法で用いる式の構築背景および適用条件は,これまで明確にされておらず,使用者は推定式を暗に利用してきた感があります。加えて,端子の設置位置により推定精度は著しく異なるという問題もあり,端子の最適設置位置を決める手段も検討しておかなければなりません。性能照査を踏まえたコンクリート構造物の機能診断では,性能評価手法を明確にする必要があることからも,各ひび割れ深さ推定式の本質と適用条件を明確にしておく必要があります。
 そこで,各ひび割れ推定方法におけるひび割れ深さ推定式および適用条件を室内実験および実際のコンクリート構造物での測定結果を踏まえて検討しています。また,より正確にひび割れ深さを推定するための新たな方法についても検討を行っています。

超音波法によるコンクリートのひび割れ深さ推定のフロー図

Key Words:超音波法,ひび割れ深さ,最適端子設置位置,伝播距離

  

  • 緒方英彦,服部九二雄,平石 聖:超音波法によるコンクリートのひび割れ深さ推定方法の検討,農業土木学会論文集 第246号,pp.25-31 (2006)
ダムコンクリートの自己収縮に関する研究  コンクリートダムの温度規制計画は,一般に許容ひずみを100μとした温度応力解析により検討されています。しかし,コンクリート構造物には,温度応力だけでなく,自己収縮や乾燥収縮に基づく体積変化を原因とする応力も発生することから,本質的には許容ひずみ100μを目標値とする温度規制計画の検討を温度応力だけで行うのは十分でないと考えられます。ダムコンクリートには,一般に最大寸法150mmの粗骨材が用いられ,細骨材率も普通コンクリートに比べて小さいことから,ダムコンクリートにおける自己収縮の発生は極めて小さく,温度規制計画に考慮する必要がないと思われてきました。しかし,温度規制計画を行ったコンクリートダムに,施工後ひび割れが発生している現実もあり,許容ひずみ100μの妥当性を含めて,温度規制計画に関する詳細な検討が必要であると思われます。
 本研究では,コンクリートダムの温度規制計画における自己収縮の影響を検討することを目的に,ダムコンクリートが持つ特有な要素を取り込んだ自己収縮試験モデルを検討しています。また,自己収縮を含めたダムコンクリートの温度規制計画に関する検討を行っています。

Key Words:ダムコンクリート,温度規制計画,温度応力解析,自己収縮,粗骨材の拘束力,細骨材のセメントペースト体積濃度希釈効果

 
  • 緒方英彦,服部九二雄,長束 勇,朝河哲也,青山咸康:フルサイズの粗骨材を用いたダムコンクリートの自己収縮特性,農業土木学会論文集 第246号,pp.103-113 (2006)
  • 緒方英彦,服部九二雄,野中資博,長束 勇,青山咸康:柱状レヤー工法による重力式コンクリートダムの温度応力解析の検討,農業土木学会論文集 第232号,pp.75-81 (2004)
未利用バイオマスを活用した親環境型資材の開発に関する研究  農業・農村には,籾殻を代表格として稲藁,枯葉,竹などの未利用バイオマスとしての有機性廃棄物が多量に存在しています。これらの有機性廃棄物には,生,炭化物,灰化物における各状態の特性,生であれば腐食性,炭化物であれば多孔質性,灰化物であればポゾラン性を有していることが多く,これらの特性を有機的に活用したリサイクルを考えることができます。
 本研究では,農業・農村における未利用バイオマスの炭化物および灰化物の特性を明らかにするとともに,粉体である炭化物や灰化物を再形成することで固体化した資材の特性を明らかにすることで,親環境型資材の開発を行っています。

Key Words:籾殻,竹,炭化物,灰化物,親環境型資材,高吸水資材,高多孔質資材

 (籾殻)

  (籾殻炭)
  • 緒方英彦,服部九二雄,高田龍一:造粒した籾殻炭を混合したコンクリートの基礎的性質,コンクリート工学年次論文集 Vol. 28,pp.1379-1384 (2006)
歴史的農業土木構造物・施設と農村地域の係わりに関する研究  全国には,農業水利事業を通して義人と呼ばれるようになった人が45人います。農業水利事業を通して義人となった人びとの功績は,現代においてどのように評価され,そしてその功績は現代のその地域の文化的・社会的・経済的環境にどのような影響を与えているのでしょうか。現在,さまざまな社会資本整備の是非を巡る議論がなされ,事業の地域性が求められるようになっている中,事業が地域に与える影響,特に長い年月が経過した後の影響を過去の事例から推考することは必要であります。また,事業が地域にとけ込むための留意事項を過去の事例から推考することも必要であります。このことは,1999年7月に制定された食料・農業・農村基本法の基本理念である「食料の安定供給の確保,多面的機能の発揮,農業の持続的な発展,農村の振興」を踏まえても重要になると考えております。
 一方,農業土木構造物・施設は,一時的に存在するものではなく,耐用年数がくるまで地域に存在し続けます。耐用年数を満たすまで存在できるか,また耐用年数以上存在し続けるかは,施工当初に有している構造体としての耐力の問題だけではなく,継続的な維持管理が重要な要因となります。維持管理を継続的に行うためには,日常点検により構造物施設に起こる異変を早急に知ることが重要であり,これには,関係者だけでなく構造物や施設を日常的に目にする地域住民の協力が必要不可欠であると考えられます。そのためには地域住民が構造物や施設と深く結びつき,構造物や施設の存在意義を理解している必要があります。農業水利事業の義人を介して歴史的農業水利事業と深く結びついている地域を調査研究することは,今後施工される農業土木構造物・施設の維持管理を模索する上での参考になり,そして,今後施工される構造物や施設の多目的利用を考える上での参考にもなると考えられます。 

Key Words:農村文化,歴史的農業土木事業,地域貢献,農業土木構造物・施設,維持管理

  

  

塩類集積圃場の排水に浸漬したコンクリートの耐久性評価に関する研究  塩類集積問題が生じている圃場においては,集積塩分を洗脱するためにリーチングが行われます。このリーチング後の排水には,一般的に,陰イオンとしてCl-,SO42-,HCO3-,NO3-が,陽イオンとしてNa+,K+,Ca2+,Mg2+が主要な成分として含まれています。
 塩類集積問題が生じている圃場の排水路は,ほとんどが素堀り水路です。素掘り水路は,通水途中に排水が土中に浸透してしまい,計画的に排水を行うことができない等の問題を抱えているため,これを克服する手段として,コンクリートライニング水路の利用が将来的に必要になっています。ただし,コンクリートは,硫酸塩や塩化物により劣化をするため,この劣化程度を把握し,そのための対策を講じなければ,コンクリート製排水路の耐用年数は激減してしまいます。
 そこで,リーチング後の排水を計画的に通水する上で必要となるコンクリート製排水路の耐久性並びにフライアッシュ等を用いた耐久性向上に関する研究を実験的に行っています。

Key Words:塩類集積圃場,リーチング排水,浸漬実験,フライアッシュ

「H. OGATA, S. SATO, S. YAMAMOTO, K. OTSUKI, H. KHALED and K. HATTORI (2001) :Durability of Concrete Soaked in Drainage Water of Salt Accumulated Fields, Sand Dune Research No. 48(3)」

シラス高盛土RCボックスカルバートの鉛直土圧係数に関する研究  RCボックスカルバートに加わる荷重には,自重,水平土圧,鉛直土圧,活荷重等があります。特に,鉛直土圧は,高盛土される時に重要な荷重になります。ここで,RCボックスカルバートを設置して盛土を行うと,カルバート上部の盛土とカルバート周辺の盛土には相対変位が生じるため,カルバート上部の盛土には下向きのせん断力が生じます。このせん断力を加えたカルバート上部の盛土荷重と相対変位のない場合の盛土荷重の比が鉛直土圧係数と呼ばれます。
 鉛直土圧係数は盛土高さとカルバートの外幅の比により異なることがこれまでの研究により明らかにされていますが,土質の違いについては明らかにされていません。
 そこで,シラスを約10m盛土した際に収集した土圧データを用いて,シラスを高盛土した場合の鉛直土圧係数がどのようになるのかを研究しています。また,鉛直土圧係数が,構造計算結果に与える影響についても研究を行っています。

Key Words:RCボックスカルバート,鉛直土圧係数,シラス,高盛土,許容応力度設計法,限界状態設計法

RCボックスカルバートの構造計算を許容応力度法と限界状態設計法で行うためのプログラムをN88BASICで作成いたしました。学生の教育用に作成しておりますので,構造計算を基礎から勉強したい方には有用だと思われます。必要な方には無償で提供させて頂きますのでご一報下さい。ogata@muses.tottori-u.ac.jp

フライアッシュおよびクリンカーアッシュ混入コンクリートの耐乾燥性と耐凍害性に関する研究  火力発電所からの副産物としてフライアッシュとクリンカーアッシュがあります。フライアッシュは,コンクリート用材料としてその利用性がさまざまに検証されていますが,同じ組成であるクリンカーアッシュの利用性については未だ研究途中であります。また,フライアュシュとクリンカーアッシュを併用したコンクリートに関しても研究途中にあります。
 フライアッシュ混入コンクリートは,強度発現が無混入コンクリートよりも遅いことから,寒中コンクリートとして用いる場合にはこの点に十分留意しなければなりません。また,クリンカーアッシュは多孔質であり吸水率が高いことから,寒中コンクリートにおいては空隙内の水分が凍結融解作用を受けクリンカーアッシュ自体が脆弱になり,耐凍害性が低下することが考えられます。また,乾燥環境下においても同様であり,フライアッシュおよびクリンカーアッシュ混入コンクリートの耐乾燥性を検討する必要があります。
 そこで,フライアッシュおよびクリンカーアッシュ混入コンクリートの耐乾燥性と耐凍害性に関する研究を行っています。

Key Words:凍結融解試験,フライアッシュ,クリンカーアッシュ

 (フライアッシュ)

 (クリンカーアッシュ)

今後実施予定の研究テーマ
研究テーマ 研究内容
○○○○○を利用したため池の○○○改善に関する研究 只今SECRETです。今後を楽しみにして下さい。
農業土木構造物の○○○○方法に関する研究 只今SECRETです。今後を楽しみにして下さい。